夢現な眠り
□11話
2ページ/4ページ
NO side
夜とはいえ、まだ閉店になっていない店の光が道路を照らしている。
大人な雰囲気のレストランから聞こえる食器が当たる音が、彼女を更に興奮させた。
そして、香ばしいパン特有の匂いが鼻を擽る。匂いの元はやはりパンのお店で、ショーウィンドーにはとても美味しそうなパンが並べられていた。
「おやおやっ? こんなところにパン屋さんがあるではないかっ!」
当然のごとくお店に入ったアオイはたちまちメロンパンやカレーパンなど、いくつものパンをトレイに乗せていく。それは一人で食べきれるとは思えないほど多かった。
流石の店員さんも目を見張るが、それは一瞬のことで、営業スマイルを貼り付け、レジ打ちを始めた。
茶色の専用紙袋に入れられたパンを左手に、そしてチョココロネを右手に持ち、アオイは再び繁華街を歩き続けていく。
その頃、学校の様子はというと。
「ねぇ、もう十分以上経つけどさ、佐倉さん戻ってきてないよね…?」
「きっと外でなんかしてるんじゃない? あの子、不思議ちゃんなとこあるし」
帰ってこないエレンを不審に思った女子二人の会話は、逆巻の人たちに聞こえることなく消え去っていった。