夢現な眠り
□10話
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リムジンの中で数秒間気絶してしまった私ですが、なんとか平気でいられてます。
悪霊退散、悪霊退散。
悪霊退散、悪霊退散。
「ねぇ、カナトくん。エレンちゃんが壁に向かって何かぶつぶつ言ってるんだけど…どうしたのかな……?」
「頭のネジが緩いのはいつものことです。放っておけばいずれ直るでしょう。ねぇ、テディ」
……。
聞・こ・え・て・ま・す・が!?
あからさまに聞こえる会話は無視して、遠くの窓に目を移す。
今日は月がよく見えるなぁ。
あっちの世界で、十五夜になるとお月見してたなー。お団子がとても美味しかった。
確かそれは小学生の時だったか。近所の広い公園にクラスメイトみんなで集まって、お月見したのを覚えている。
そのときは月がすごい輝いていた。みんなの顔がハッキリ見えるくらい。
「…痛っ……」
こめかみに鈍痛が走った。
視界が歪んで見える。
あれ、気が遠のいていく。この感覚はもしかして…。
机におでこがぶつかった音がするが、その痛みよりも体中に巡るふわふわした感覚に酔いしれた。