夢現な眠り

□9話
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「…あ! レイジさんっ!!」
「なんです? そんな大声で──」

私はキッチンにいたレイジの腕を掴み、例の黒い扉の元へ連れ出した。

「ここの部屋の鍵はどこか知りませんか? 鍵が掛かってて入れないんです」

そう、例の部屋だ。

もう一度絵画を見に行こうと、扉を開けようと思ったら、何故か鍵が掛かっていた。

昨日はすんなり入れたのに…。
誰かが閉めたのかな。

「その扉は、元から開きません。何度扉を開けようと試みても全て失敗に終わりました」
「え………?」

すっと肝が冷えた私に、レイジは更に追い込む。

「その扉を開けることは、ほぼ不可能に近いかと」









レイジが去っていった方向を見つめながら、私は自分の行動を思い返す。

元々、あの扉は元々開かない……? じゃあ、なんで昨日はすんなりと開けられて、あの部屋に入れた?

え、ホラー?
やめてよねー。私そういうのは無理よ。

…あの絵画、どうしても忘れられなかったのに見れないんじゃ、もうしょうがない、のか。

それにしても。

一体、私はいつ元の世界へ帰れるんだろう…。

物事が上手く進まず、唐突に感じた疑問。ずっとそれを考えてモヤモヤしていたが、それも限界になってきたようだ。

あ、ダメだ。
それを思えば思うほどに、寂しさの感情が溢れ出してしまう。
前までは当たり前だった日常が、突如消え去ってしまう虚しさは、きっと誰にも吐き出せない。

無性にイラつく私の心を抑えるように、逆巻家の壁をげしっと蹴った。


その衝動で近くにあった棚が揺れ、飾ってある綺麗なツボが、地面へ急降下。



おっと。
これはやばす。

……なんて私はついてないんだ。




逆巻レイジの足元に私が土下座をするまで、あと一分。
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