夢現な眠り

□6話
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嫌と断ったのに、シュウの牙はしまう素振りもない。まったくもう。

「覚えてないのか?」
「はぃ?」
急に何を言い出す。

「校門まで運んでやったのは、どこの誰か……忘れた?」

くそぅ、あの時のことをネタに出すのかよ。しかも、覚えてやがったな。
シュウなら一回寝たら忘れると思ったのに。

「その件はどうも、大変お世話になりました」

はい、ちゃんとお礼言ったよ。
感謝の気持ち、大事。



…向けられる視線が痛いんだけど。

あっ、察したぞ。
この流れは『その分もあんたの血で借りを返せ』と言いたいのか。

お綺麗顔に怖いほどに迫られ、あと一歩下がったら無様にベッドから転落するだろう。それは嫌だな。

「ちょっ…」
「あんたに拒否権なんて無い」

ムカッ。
出たよ…出ましたよ……。

乙ゲーでお決まりのこのセリフ!
抵抗するヒロインには大抵このセリフが使われてる。それは、イケボで且つイケメンな『二次元』でなら私だって萌えるよ。きっと。多分。


でも、リアルだと正直怖いわ。
シュウファンには悪いけど、そんなドSチックな事をあんたに言われたって、私が胸をキュンとして大人しくなるわけないだろ!

むしろ少しムカついてくるわ。人権無視はんたーい!

些細な怒りに身を任せ、私は手元の傍にあったふかふかの枕をシュウの口元に押し付ける。

小さな呻き声が聞こえたけどスルーだ。

「ここに泊めさせてもらったり、学校の件も感謝しています。先程の寝起きのことも申し訳ないなとは思ってますよ」

「けど!」と声を張り上げ、枕をもっと強く押し付けた。ふふふ、これでお口チャックをしてください。


「だからって私が血を易々あげるとでも思ってたんなら、それは見当違いね」

気怠そうな瞳に私の顔が映っている。
うん勇ましいぞ、私。
出血多量で死にたくないなら、自分で抗わないと。

シュウは枕から顔を背け、面白そうに嘲笑った。嘲笑される義理もないけど、まずはベッドから降りろや。



「ともかく! 例えあなた達が無理矢理吸おうとしても、私″ら″は対抗し続けますからね」



「…だる………」
「おい落とすぞコラ」
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