夢現な眠り
□5話
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何した…何した…何した…。(エコー)
あっ、まさかあの時のこと……!!
って、知るかボケ!!!
「すんません…さっぱり…?」
「あぁ!?」
アヤト様…青筋が!! キャー、怒った〜。
「まぁまぁ。アヤトくーん、落ち着きなよ」
ライトが静めてくれたが、私一体何をしたのかさえ解らない。
しかもアヤトに? 私…、自殺願望はないはずなんだけどな。
「なんかごめんなさい?」
一応謝っておこう。
「いや〜、百面ちゃんがアヤトくんと互角に張り合う姿は、スゴーくハラハラしたなァ」
恍惚としたライト。
…うん、もう私はライトにツッコまない。
それに聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。
『張り合った』?
私、日本語を認識できなくなったみたいだ。
互角に張り合う?
そんな派手で無謀な事した覚え──、
あいつらかぁぁぁぁ!!!!
うっわ、最悪なパターンじゃないか。
もっかい謝っとこ。
「とりま、ごめんちゃい」
「ふざけてんのかテメェ」
でもさ、別にアヤトを殴ったとしてもだよ。きっと状況的に正当防衛だったんじゃね?
……とか思っちゃいましたが、口には出さないでおきましょうか。
「まぁ、過去は過去だ! 水に流そうぜー」
このこの〜と肘で突っつくと、嫌そうに顔を顰められた。
「佐倉エレン。こっちへ来なさい」
冷たくて低い声に、一瞬肩が跳ねた。
ヤバい、ここが逆巻の住処なことを忘れてふざけすぎてしまったかも。もういいいやと開き直ったら、ついタガが外れてしまった。
「人様のお家で騒いでしまい、すみませんでした」
「切り替え早ェなおい」
後方でスバルの声が耳に入るが、聞こえないふり。聞こえないふり。
「貴女は私達のことをどこまで知っているのですか?」
「えっと……」
返答に困る質問ぶっ込まれたーっ! そして、レイジさんのおめめが怖いデス。
これは、隠し通すのも潮時ってやつ? でも言った方が良いのか、それと黙秘か。
やっべぇ、どっちもバットエンド一直線な気がするんすけどー。
不本意ながら、スバルに見つかった事が運の尽きで。…まぁ、この世界に来た事自体が不幸以外の何モノでもないんだけどね!
このまま白状した方が、後はラクなのかな?
例え黙秘してたって、後々こいつらに尋問されるのはごめんです。ええ。
トリップしてきたことは言わないけれど。
「偶然通りかかっただけ…です」
「ほぉ…、偶・然?」
「本当です! 廊下を歩いてて『一人で歩くのはなんか怖いなー』とか思ってたら、どこからか女の子の声が聞こえて…」
うん、ウソは言ってない。
「声のする方に行ってみたら…あの〜、なんていうか…皆さんで言う『お食事』の真っ最中でおりましてですねぇ」
「ぷっ。お食事って言い方…!」
ライトはツボが浅いな。
めっちゃくちゃ笑ってるやん。
「つまり、私達が吸血鬼なのはもう知っていると?」
「そうです……ね。ハイ、知ってます。とりあえずこの件については誓ってだれーにも言いませんので、つか喋るつもりも毛頭ないので家に帰してくださいお願いします」
その場でぺこりと土下座。
なんなら土下寝でもしてやろうか…!?
「これで?」
だるそうに窓を指差すシュウ。
つられて見てみると──。
窓ガラスに雨が打ち付けられる音や、遠くで起きたであろう落雷の音が私の心をズッタズタに切り裂いた。
いつの間にか外が台風起こしてたなんて、私知らなかったなー。(白目)
「ウソです、ごめんなさい。台風が止むまで此処にいさせてください逆巻様ぁ…」
涙声でレイジに迫ると、宿泊を妥協してくれた。
よっしゃ。
…天気なんだから仕方ないとはいえ。
まさか自ら逆巻家に留まるという日が来るとは思わなかったよ、過去の自分よ。