夢現な眠り
□1話
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「っ…ふっ…んっ……やだっ…」
「おい、動くんじゃねぇよ」
え、この艶めかしい声はなんですか。
家庭科室で吸血とは、凄い大胆ですねアヤト様!
僅かに開いたドアの隙間から見えるのは、キッチンにユイちゃんを押し倒して吸血するアヤトの姿。目の前の血に夢中で私がいることは分からないっぽい。
それなら好都合だ。
よし、気付かれないように逃げよ。
つか私、もう三つ子全員見ちゃったよ、接触しちゃったよ。なんというご都合主義。
「ん………っ!!! そこにいんのは誰だ!!?」
っ!! なんでバレた!?
突然のアヤトの大声に安心しきっていた私の肩が跳ね上がる。もう私は家庭科室から離れてはいたが、逃げないと確実に見つかる距離で。
アヤトはバカだからと鷹を括ってたらすぐこれだ。
油断大敵とはこの事だな、アハハ。
ってふざけてる場合じゃない。
これはガチでヤバい。
『左に曲がって!!』
また不思議な声が聞こえた!
でも私は信用するよ。だって今は緊急時だし!
ノイズは未だに混じってはいるが、なにかの"声"はちゃんと聞き取れた。
そうなりゃ、やる事は一つ。