夢現な眠り

□Prologue
1ページ/1ページ

私のいる学校には少々…いや、物凄くやっかいな六人がいる。





そのうちの一人、逆巻アヤトは私の席の前でぐーたらと授業を聞き流している訳だが。
先生はもう諦めの領地に入ってるのか、誰もだれーも咎める事はない。
ぐっすりと寝ているアヤトの背中をぽけっと眺めながら、私は考える。


…私、何でこんなとこに来たのよ。


唐突だが、私はこの世界にトリップしてきた平凡な女だ。

って痛い子を見るような目線止めて!? 本気だから!! 本気と書いてマジだから!!


……こほん。
私がいた世界では、ここは「DIABOLIK LOVERS」っていう女性向けゲームになってました。
アニメ化もされてたなぁー。
ストーリーは吸血鬼との禁断の恋を描いたんだってさ。え、適当? しょーがない。

だって私、DIABOLIK LOVERSやったことないもん。

ゲームのファンだけがトリップしちゃう……って訳でもないのですよ〜。ファンでもない無関係な女がこの世界に飛ばされるなんて、需要の『じ』の字もないだろう。

でもゲームの存在は知ってたし、第一印象はダークな乙女ゲームなんだなっていう認識。
友達が凄くハマってたから、キャラの性格などは多少理解してるつもり。

ファンはこの世界にこれて嬉しいとか思うかもしれないけど、私は断じて違う。
むしろ、元の世界に返せコラ。


こんなに私が嫌がってる訳はもう察しが付くと思うけど、DIABOLIK LOVERSに出てくる吸血鬼の攻略者達──逆巻兄弟に目を付けられると、大変な目に遭うから。

自分が大事です。
大切な事だからもう一回言います。
自分が大事だー!! 私は生きるんだ!!

あ、うるさい? めんごめんご。いま授業中でしーんと静まっているから、心の中では騒ぎたいの。



逆巻兄弟に近付かない理由は「死にたくない」意外にもう一つ…。

"あの事"で興味を持たれたらたまったもんじゃない。



あー。早く元の世界に帰りたい。
……現時点で無理なのは百も承知だい。



ああ、言ってるそばから気が遠くなってきた。何も起こさないと良いけど。


そうして"私"は霞んでくる意識に抗う事もせず、身を任せていった――。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ