夢現な目覚め

□決着の勝敗はいかほどに?
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「あっ! エレンちゃ〜ん!」
エレンと呼ばれた彼女は今、足を組みながら本を読んでいる。

「…? あぁ、小森さんか」
「えっと……リ、リンさん…かな!」
「正解」
淡々とした口調でそう言うと、読書に戻るリン。
ユイは隣に腰掛けると、笑顔で喋りかける。
それを適度に相槌を打ったりと、その場は和やかな雰囲気に包まれる。

だが…。
「おいチチナシ! 血ィ寄越せ」
「ア、アヤトくん!?」
突然の来客はづかづかとユイの元へ歩み寄り、ユイの首筋に牙を近付けた。

「い、今!? ここで!?」
隣にはリンがいる。
恥ずかしさでユイはバタバタと暴れるが、アヤトは隣にいるエレンの中身がリンなのを気が付いていない。



静かに本を読んでいたリンだが、痺れを切らし「……騒々しい」と嘆く。

「あ?」
双方の瞳が交差し、数秒時が停止したように感じた。

「オマエ…!!!」
アヤトには"リン"の瞳にすぐ気付き、怒鳴りの様な声を発した。
リンは「なんだよ」と興味無さそうに言うが、アヤトは複雑で嫌そうな表情をする。

「あの時のことをまだ気にしているのか? 私を見る度に変な顔をするな、おこちゃまめ」

口元がピクッと引き攣り、アヤトが怒っているのは間違いない。
それを悟ったユイも、被害が自分に来ないよう、こっそりと彼から距離を取っていた。

「今度こそぜってェ吸い尽くす……!」
「無理だろ。…そう言いながら何度も同じ結果だと、相手するのにも流石に飽きる」
目線は本から離さずに、一つ欠伸をした。

すかさずアヤトの拳が、顔すれすれまで飛ぶが、身動きせずに本のページを捲り続ける。

「そんな脅しは効かん」

「ア、ア、アヤトくん…落ち着いて…!!! またレイジさんにこっぴどく怒られちゃうよ…!」

過去に、屋敷の中で喧嘩(ほぼアヤトの一方的な攻撃)が起きた拍子に、屋敷が半壊の一歩手前の所までやらかしたのだ。

「チッ」
必死の制止で、なんとか怒りは静まったが、ギラギラした瞳はリンを捕えている。


「つーかよ…」
震えだしたアヤトの肩。
何かを堪えている様子だ。

「あん時はオレの勝ちじゃねぇか!!」
「はて、何のことやら。単に私が発作を起こして倒れただけだが?」
「いーや! よろけたオマエをオレが蹴り飛ばしただろーが」
「あれは拒否反応で起きたモノであって、私自身が見せた隙ではないからな。どう考えてもノーカンというものだ」


ああ言えばこう言う。
オレ様イケメン吸血鬼と無表情な少女が言い争っている。

そんな意味不明な状況で、一体自分は何をすればいいのか。
小森ユイは試行錯誤の末、ここから逃亡する事に決めた。

「私…ついていけない…」
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