夢現な眠り
□8話
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「起きてー」
「…んぅー…もーちょっと……」
「しょうがないなぁ。ボクのキ──」
おぞましい程の寒気が背中を走り、私は飛び起きた。
「ああ、いい目覚めだな!おはよう!」
危ない危ない。ライトは「最後まで言わせてよ」と肩を竦めている。
そして、ここが自分の自室だと気がついた。
「あれっ? 私……」
「廊下に転がってたのをスバルくんが拾ってくれたんだよ」
あ、転がってたんですか。スバルくん拾ってくれてありがとう。
でも廊下じゃなくて、違う部屋にいたはずだよね?
まさか、人格交替? こんな突然に?
直後に起こる、心を引っ張られるような感覚は無かった。それにあの絵を見てからの記憶が……。
絵?
私は何を見た?
思い出せない。
霧が入ったように、あの部屋での記憶を思い出すことが困難だ。
あの部屋に何かがあったのかな? ああ、分からないことだらけだ。
忘れよう。
うん、考えでも分からないなら、さっさと忘れてラクになろう。
「目の前に男がいるのに、考え事? 余裕だね」
「あー、はい」
改めて状況を見てみる。
ベッドに寝てる私。
馬乗りのライト。
そうだった、忘れかけてた。こいつ、いろんな意味でヤバい奴だった。
どんなに甘い言葉を投げられようと、どんなに顔を寄せられようと、私は靡かないぞ。床に寝てても吸わないでいてくれた、スバルの方がまだマシだ。
「相変わらず反応薄いなぁ」
ふっと耳元に息を吹きかけられる。
「──っ!」
ぞわっと来たぞ、ぞわっと。
危険信号のサインがでたので、手元の枕で殴ることにしよう。
ぼすんっ。
気の抜けた音を鳴らし、枕はライトを撃退した。
ふっ(達成感)
「ほんと、どことなくカヤちゃんと似てるよねー。少し無鉄砲な感じ?」
ひょっこり復活したライトは、私に挑発的な笑みを浮かべた。
こいつ今……なんて言った?