夢現な眠り
□14話
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No side
閉められた鉄の扉に指先が触れると、体内に巡るモノが冷たい扉に吸収された。そしてロックが解除されたとでもいうように、歯車が合わさった音が微かに聞こえる。
何故彼らが使う屋敷にこの部屋や、自分の姿が描かれた絵画が存在するのかという疑問は少なからずある。だが"あの人"がこのことを見越して、此処に置いておいたのだとしたら、我ながら凄い兄を持ったと自負しよう。
「散らかっているではないか…」と小言を漏らしながら、無造作に床に捨てられた白い布を拾った。
そして何百年以上と飽きるほど見てきた、自身の外観が描かれている油絵をなぞる。まさかもう一度この姿を目にするとは。
この世界にエレンが投げ出されたときに感じた、彼らの気配。相変わらず変化していない気配だが、体や容姿がどれほど成長していたなどの情報はまったく把握していない。
最後にあったのは彼らが小さい頃だ。本当に『久しぶり』の状態で、何という顔をして会ったらいいのか……。
立派に成長した姿が気になるのは、年寄りの性である。
「っ、! ふ……」
どくっと高鳴った胸を強く押さえた。エレンがこの世界に迷い込んでからというもの、胸の痛みは次第に強さを増していた。
このままでは、マズいかもしれない。
その予感が的中したのか否か。何やら不穏な音が胸の奥で生まれた。