夢現な目覚め

□決着の勝敗はいかほどに?
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ユイが逃げたのにも気が付けない二人の争いは、二時間もの時が経過する。
案の定、両者は体力を消耗しながらも口論を続けていた。

「オレの…攻撃受けて…動けなく、なったのは…オマエだろ…」
「ふざけるな…大体、貴様が私に触れようと…したから悪いんだろう…この変態野郎が……」

アヤトは心底げんなりした顔で「アレと一緒にすんな!」とリンの額を小突く。

油断してたらしく、簡単にリンは床に崩れる。
………アヤトも巻き添えに。
「うぉっ…あぶねーな」
「なにオレ様の袖掴んでんだ!」
「あ、悪い」

リンの手を乱暴に振りほどく。
「掴まったくらいで、なにカリカリしてんだよ。気色悪いな」
「うるせ…!!」
そっぽを向くアヤトは、ほんのり耳が赤くなっていた。
そのことに気付いたリンはニヤニヤと笑みを浮かべた。

「なんだ? 照れてんのか?」
「誰がオマエに照れるか、誰が…!!」
眉を寄せ、懸命にアヤトは弁論すると――。





「アヤトくんの照れ屋さんっ♪…そんな所も大好きだよっ?」





高くて可愛らしいソプラノ声で粒がれた言葉。
その持ち主は他でもないリンだ。
いつもリンが喋る声色はアルトの様な心地良い低音なのだが、こんな声も出せるようだ。

「なっ…な…な……」

その効果は絶大な影響を与えたようで、アヤトは顔を赤く染め上げる。


「……ぶはっ!!! なにパニクってんだよ! 腹痛ぇ! あはは!!」
一人の少女が、床を転がりながら笑う姿はなんとも面白い光景だ。

彼女が笑い終えた時も、相手は未だにピクリとも動かない。
先程の威勢はどこかへ行ってしまったのか。



「とりあえず、今日は私の勝ちな」
彼に向かい、リンはウィンクをして部屋を後にしたのだった。その足取りは軽やかで、とても機嫌が良さそうだ。






――数秒後、アヤトの怒りの叫びは屋敷中に聞こえたのは言うまでもない。
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