†ルーン・マジック†
□プロローグ
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プロローグ
木々が鬱蒼と生い茂る森の中……
ただ踏み固められただけの道に二人は居た。
「ゼロ〜、暑い」
女の方が口を開く。
顔つきを見る限り、女と言うより少女と言った方が正しいかもしれない。
背は低く、150cmにも満たない。
「俺だって暑いぞ、アリソン。
そんなに暑いならコートを脱げば良いだろう?」
対してゼロと呼ばれた男は怠そう返事を返す。
彼は先の少女とは違い、身長は優に180は越えている。
「やだ、コート持つの面倒」
「ふむ、確かにそうだな」
「ん、そうなの」
この森に入ってからずっとテンションの低い会話を続けているこの二人。
どうやら会話が一段落付いた様で、暫し静寂が訪れる。
二人組みの片割れ―――ゼロと呼ばれた男(正しくはジェラルド)はシャツやネクタイ、ボタンまで真っ黒なスーツに身を包んでいる。
本来なら銀髪銀眼の整った顔立ちは、これ又真っ黒なシルクハットを目が隠れるぐらい目深に被り、この上無く怪しい。
対するアリソンと呼ばれた金髪碧眼の少女。
彼女の服装もジェラルドと同じ様な物だが、シルクハットは被っておらず、代わりに(?)黒いロングコートを羽織っている。
彼女も中々に怪しいが、その可愛らしい容姿のお陰でその雰囲気が幾分和らいでいる感はある。
この二人、れっきとした(?)恋人同士。
身長差が大きいのでパッと見歳は離れていそうだが、実際には二人共同い年である。
「ねぇ、次の国…スプラム? 美味しいのある?」
「ん? あぁ、あの国は魔術が盛んで物静かな国だったらしい。食に関しては知らん」
「静かな国……だった?」
「あぁ。何でも最近は、若い奴等を軍隊や騎士団に勧誘してる……らしい」
「んゆ、戦争でもやるの? そもそもそんな国に『指輪』なんて在る?」
「知らん、だが可能性は0じゃない。 探す価値は在る」
「ん……暑い〜」
「俺だって暑いぞ、アリソン」
「でもコートは脱がない!」
「アリソンが良いなら構わないが」
「ん。……んゆ?」
「どうした?」
「ねぇ、あの旗って……?」
「あぁ、スプラム国の国旗だな」
「おぉ〜、じゃあ、後もうすぐで着く。
早く着いてご飯食べる!」
「そうだな」
「……ゼロ、今度こそ『指輪』が見つかると良いね!」
「あぁ、何が何でも見付けてみせるさ」
「頑張って。私も手伝うから」
「……アリソン」
「何?」
「何時も悪いな」
「どって事ない」
二人は探し続ける
何処に在るのか
幾つ存在するのか
《神の宝玉》の全貌を知る者は居ない。
だが、それでも二人は探し続ける。
男は亡き恩人の夢を叶える為に……
少女は愛する男を手伝う為に……
延々と延々と……
END