カルディア学園

□お婆ちゃんを守れ!
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「オメー気合いの入った呪いの人形みてーだぞ?」

「うるさい!」


黒の長髪に綺麗に切り揃えられた前髪……寝不足で人相もアレなので、確かにそう見えなくも無い。


「フラン、私も寝た方が良いと思いますよ?
今の貴女では病に蝕まれながらも魔王を打ち倒し満身創痍となった勇者の方がまだ頼れます」

「ごめん、今は通訳する気力無いんだ……」

「要するに今のフランでは戦力にならないので寝て下さい」

「無理。一刻も早くお婆ちゃんに仇なす不届き者を……!」


フランはそう言うと、彼等の言及から逃げる様に立ち去った。


「聞く耳持たんな……気絶させるか?」

「ゲーリーがやったら気絶じゃ済みませんよ。彼女に頼みます」

「アイツか……アイツなら大丈夫か」

「えぇ、きっと」


グラディアスは自信に満ち溢れた声で微笑んだ。






「空き巣……出てきな空き巣……ぶっ飛ばして……」


呪いの言葉を紡ぐ亡者の様にゆらゆらと歩くフラン。
最早、病院から抜け出した患者と間違われても文句は言えない。


「フラン!」


そんな話し掛けるのも憚られる彼女に声を掛ける一人の少女。
一目見ただけで上等な物だと分かる服を纏った少女はしかし、怒った様に眉を吊り上げている。
いや、『様に』ではなく本当に怒っていた。


「ラーチェル……?」


フランは、自分にとって数少ない友人の一人であり、グラディアスの許嫁でもある少女の名前を呟いた。


「何してるの! 身体壊しちゃうよ!!」


ラーチェルの怒鳴り声にビクリと身体を震わせるフラン。
多少天然な所はあるものの、礼儀正しく穏和な少女がこんなに怒りを露わにしている所は見た事がない。


「でもお婆ちゃんが……」

「グラディアスやゲーリーさんが見張ってるから大丈夫!
グラディアスを信じてよ」

「あぁ、アイツの事は信用してるさ。でもジッとしてられないんだ……」

「これで倒れたらお婆さんも悲しむよ!」

「お婆ちゃんを守れなかったら一生自分が嫌いになる」

「……分かった」

「あぁ、ありがと……」

「そんなに行きたいなら……私を倒してからにしなさい!」

「……は?」

「さぁ、勝負よ! んなぁーーーーー!!」

「ちょ、雄叫び……」


ラーチェルの奇妙な雄叫びに戸惑いつつも、フランは迎撃体勢を取り……そしていとも簡単に押さえ込んだ。
幾らフランがボロボロとはいえ、格闘技どころか喧嘩も出来ないラーチェルが敵うハズも無い。


「なぁ、頼むからおとなしく……」

「はむーーーーーーッ!!」

「あだだだだッ!? か、噛むのは流石に……」


幾ら革スーツの上でも、ラーチェルのマジ噛みを弱らせる効果は殆ど期待ない。
ラーチェルは思わず手を離したフランに背を向け、背後に置いてある自分のバッグへ猛ダッシュ。


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