カルディア学園

□図書室に巣くう混沌
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「そんな……!? でも副番のエレナさんは良い人っぽかったし……」

「あぁッ!」

「ひぐ……!?」


ヤンキー女子の一人がキーンの袖を掴んで引き寄せる。


「文句があんならリッツさんの前に引きずり出してやろうか?」

「待ちなって。こんな奴リッツさんの手を煩すまでも無い。アタシ等で絞めちゃお」

「ぅ、や……ぶたないで……」


此所に来てキーンは勇気の貯金を使い果たした。
涙を流し歯は噛み合わない。
心身共に逃げたいという思いは同じだが、袖を掴まれている上、囲まれているのでそれも叶わない。


「ん〜? 痛いのは嫌?」

「………!」


最早言葉も出ないのか、コクコクと首を縦に振って肯定する。


「じゃあ、さ……」

「あ、痛っ……」


その内の一人がキーンの髪を掴んで無理矢理に顔を上に向かせ……


「謝れよ」

「……ふぇ?」

「謝れつってんの。それともやっぱ"お仕置"の方が良い?」

「ぅあ……ご、ごめんなさい!」

「だ〜め。誠意が感じられないよ。土下座しな土下座」

「う……」


袖と髪を解放され、ヤンキー達も距離を取り自由を確保されたキーンは力無くへたりこむ。
そして怯えた目付きでヤンキー三人を見回し……


「も、申し訳ありませんでした……」


要求通り、ゆっくりと土下座して謝罪の言葉を口にした。


「ぷ……アッハハハハハハハハ!
やったやった、マジでやりやがったよコイツ!!」

「ねぇ、恥ずかしくないの?
あんだけ威勢良く楯突いといて結局我が身可愛いさに土下座って。
アタシだったら恥ずかし過ぎて生きていけないよ」

「プライド無いのかよ。人間失格。風上にも置けない」

「うぐ……うわああああああああああん!!」


とうとうキーンは泣き崩れた。
それにより女子ヤンキーは益々笑い声を大きくし、図書室にいた僅かな生徒達は皆見て見ぬふりをするばかり。


ガタッ――………


ただ一人……気持ち良く惰眠を貪っていた狼を除いて。


「……うるさいな。図書室は静かで居眠りには最適だと聞いていたんだが」

「ひぐ……それ、も…違っ……うぅ」

「な、銀狼ッ!?」


泣きながらもやんわり訂正を試みるキーンに対し、女子ヤンキー達は思わぬ人物の登場に動揺を露わにする。


「なに? アンタには関係無いじゃん」

「大ありだ。人がせっかく寝ていたというのに大声で騒ぐとはな……お陰で目が覚めてしまった。
終いにはそこの眼鏡の泣き声でダメ押しとはやってくれる」


ジェラルドの言葉に大きな起伏は見られず、至っていつも通りのローテンションに思える。
しかし聞く者が聞けば、彼が気分を害していると気付いただろう。


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