カルディア学園

□図書室に巣くう混沌
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翌日


「ほえ? ボクがゼロさんをどう思ってるか?」


ラピスは首を傾げた。


「う、うん。ちょっと聞いてみたいな〜、なんて……」


アハハ……と明らかなごまかし笑いを浮かべるのは件の少女、キーン・ブックス。
引っ込み思案な彼女が自ら動く事など滅多に無いが、それが図書室の秩序に繋がるとあれば納得する者は多いだろう。

まずは敵を知れば百戦危うからずの言葉に従い、ジェラルド・クライドの情報を集めようと思い立った。
しかし流石に本人に直接聞くのは躊躇われる。
そこで白羽の矢が立ったのがべらぼうに広い交友関係を持ち、且つ違うクラスでありながら自分にも友達として接してくれるラピス・メイビアであった。


「んとね、ゼロさんは……ちょっと怖いかな」

「え……?」


ラピスの言葉に顔を引きつかせるキーン。
ラピスはその広い交友関係が示す通り様々な人種と交流を持ち、その中には精強と名高いカルディア学園のヤンキー等も含まれている。
そもそも恋人であるリッツからしてカルディアのスケ番であるし。

そんなラピスはそんじょそこら……いや、それ所か番長ベルガの威圧にも怯える事はない。
彼女は相手がどんな輩でも『きっと仲良くなれる』と根底から信じているからだ。
しかしそんな彼女をして怖いと言わしめるジェラルド……キーンはそれだけで半ベソ状態に陥った。


「うぅ、とんでもない人が居着いちゃったよ〜……」

「あ、でも怖いっていうのは乱暴とかそういうのじゃなくて、得体の知れない感じが気味悪いみたいな?」

「メイビアさんがそこまで言う人って……」

「でもボク、ゼロさんの事好きだよ?
ベルガさんやキーン……皆と同じくらい!
ゼロさんの方はボクの事避けてるみたいだけど、いつかきっと仲良くなれると思う」

「その純粋な笑顔が眩し過ぎる……」

「役に立てたかな?」

「え? あー、うん。とっても助かった。ありがとう!」


正直、ラピスの純粋さとジェラルドの不気味さしか分からなかったが、キーンがそんな事言えるハズがなく。
しかしラピスはキーンの態度に何かを感じ取った様で、頬に指を当てて暫し考え……口を開く。


「なんだったらゼロさんと仲の良い人紹介しようか?」

「あ、怖い人はちょっと……」

「大丈夫! アっちゃんと仲良くなれる人だから」

「私アっちゃん知らないけど……まぁ、怖くないならお願い」

「うん。今メールするから待っててね!」





「えっと、こんにちは……」

「貴女がキーン・ブックスさん?」

「はい。何かいきなりすみません……」

「別に予定は無いから良いけど……」


キーンの眼前に立つ少女……セシル・ハミルトンは訝しげな表情でキーンを見やる。
無理も無い。会話すら交わした事の無い他クラスの同級生がジェラルドに就いて聞きたいと訪ねて来たのだから。
もしラピスの紹介でなければ断っていたかも知れない。


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