カルディア学園

□剛の璧
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だがアリソンは失念していた。
確かにジェラルドならただ大きいだけの者には負けないだろう。

しかし……カルディアの双璧と謳われるダドが『ただ大きいだけ』のハズが無かったのだ。


「本気で行くぞ! ずえええぇぇぇぇぇぇいッ!!」

「……………」


ダドはいきなり突っ込んで来た。
まるで自らを砲弾と化したかの様に、一切の躊躇いも無く。

対するジェラルドは大きく動いて肉の砲弾を避ける。
普段なら相手の攻撃を必要最低限の動きで避け、コツコツ蹴りを入れるのが彼の闘い方。
それには適度に距離を取るのが重要で、その為近付いてくる者にはカウンターの前蹴りをお見舞いするのだが……流石にこの巨体での全力タックルを前蹴りで止められるとは思わなかった。
それでも離れ際にはきっちりローを入れる辺りがジェラルドらしい。


「ぬ、流石に単純な突進では勝てんか……」


そう言いながらジェラルドを正面に捉えるダド。
彼は目を細めて対象を見つめ……再び突進。
しかし今回当てるのは身体では無く掌……所謂張り手だ。


「当たるか」


「ぬお……!?」


先程の攻防で慣れたのか、ジェラルドは張り手を避けてまたもやローキック。


「ぬぐう……ッ!」


中々上手く行かない苛立ちにダドはギリっと歯を噛み締め……腰を落とし、両手拳を地面の近くまで落とした。


「……………」


見るからに絶好のチャンスだがジェラルドは動かなかった。
……いや、動けなかった。

ダドから掛かるプレッシャーが半端では無い。
もし誘いに乗って前に出たら、その圧倒的な重量を持って叩き伏せられる。
ほんの少し左右どちらかに進もう物なら、今すぐ飛び掛かられそうだ。
ゆっくり後ろに下がっても、初速の素早いあの構えの前では後ろ歩きなど簡単に追い付かれる。
かと言って背を向ければそれこそ終わり。

並の相手ならジェラルドがそこまで悩む事は無い。
至って冷静に前に出て早々に仕留めるだろう。

だが、カルディアの双璧を成すダド・クバラトフは並の相手とは格が違い過ぎた。


「……………」


ジェラルドは無言で前に足を出し……その瞬間、ダドがゴム鞠の様な俊敏さで飛び出し、胸に向かって張り手を繰り出す。
対するジェラルドは猛スピードの張り手を何とか避けるも、ダドの手がジェラルドの上着に触れた際、彼が咄嗟に上着を掴み、その怪力でジェラルドをいとも簡単に引き寄せた。

しかしジェラルドは引き寄せられる勢いを逆手に取ってダドに強烈な膝蹴りを叩き込む。


「ぐおぉ……!? 何をまだまだぁ!!」


ダドはかなり苦しんでいるが、それでも怯んだ様子は無い。
もっとも、彼は筋肉の上に脂肪の鎧を纏っているので無理も無い事なのだが。


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