カルディア学園

□剛の璧
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「あ、そうそう。ラピスなんかは結構運良いんですよ。
この前も自販機で当たりが出てもう一本ジュースが出てきました。
自分のはもうあるからと、そのジュースを何の躊躇いもなく近くに居た子供にあげてましたけど」

「普段の行いの差だな」

「自覚してるなら改善しましょうよ」

「無理だ。ラピスの様な生活は俺の生き方に反する。
奴は八方美人でも無いのに何故あんな多くの人種と付き合えるのか」

「カリスマというヤツでしょうか?」

「だとしたらとんでもない才能だな。
本人には自覚も野心も無いらしいが」

「まぁ、ラピスらしいと言えばらしいですね」


セシルはアハハ、と笑う。
しかしその笑い声は、彼女達の背後から聞こえる野太い声によってかき消された。


「おい、そこの白黒!」

「……俺か? 肌と服の色を一緒にして呼ぶな」

「ジェラルド・クライドだな? 少し話しがある」

「ふむ、ダド・クバラトフか」

「知り合いですか?」

「いや……だが有名な奴だ。
カルディアの"双璧"を成す男で、剛の壁と呼ばれているらしい。
後もう一人、体格故に壁と呼ばれる奴が居る。そいつは柔の壁だな。
今のカルディアのトップ3と言えばベルガ、リッツ、バルダだが、カルディアの双璧と言えば奴等を指す」

「ほう、そこまでワシの事を知って貰えるたぁ、ちぃっとばかし照れるな。
だからこそに心苦しいが……今日はオメーさんに文句を言いに来た」

「文句?」

「おう。昨日、ワシより一回り小さい奴とやったやろ?
そんでそいつがオメーさんに負けて怪我をした」

「向こうから仕掛けて来たんだ。俺は断った」

「分かっとる。それに関してはこっちが全面的に悪い。すまん!
しかしオメーさんは決着が着いても蹴り続けた。
挙げ句それを止めに入った奴もな。
確かに非はこっちにあるが……弟分が必要以上に傷付けられた以上、ワシも黙っとる訳にはいかんのじゃ!」

「……で、結局お前は何が言いたい?」

「ワシと勝負せい!」

「それで、お前の舎弟と同じ怪我を俺にさせるつもりか?」

「勝ち負けの問題じゃない! ワシはオメーさんが気に入らんのじゃあ!」

「あぁ、良いな。至極単純で分かり易い理由だ。
最初からそう言えば良い物を……」

「で、勝負は受けるんか? 受けないんか? どっちじゃ!」

「受けてやる。此所でおとなしくさせておいた方が後々面倒が無くなるだろう」

「よし、場所は此所で良いな?
お嬢さん方、危ないから離れてくれ」

「え? や、あの……」


突然声を掛けられたセシルは慌てた様にあたふたし、傍らのアリソンに問い掛ける。


「止めなくて良いんですか? あの人とてもとても強そうですけど……」

「大丈夫。ゼロはただ大きいだけの奴には負けない」


アリソンは自分の事じゃないのに自信満々に断言し、そのままセシルを安全圏まで引っ張った。



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