カルディア学園

□副番の憂鬱
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「それから暫くは姉と疎遠になったわね。
話し掛けられても無視、一緒に入っていたお風呂も一人で入浴する様になって……
理由も聞かず、一方的に嫌って」


ハァ……とため息。

彼女が姉――レオナ――の真意を知ったのは、それから約半年後……街で偶然姉を見掛けた時だ。

その時姉は髪を染めた如何にもヤンキーな風貌の二人の女生徒と話していた。
その脇にはメガネを掛けたおとなしそうな女生徒が一人。
会話は良く聞こえないが、姉の姿は見える。
腰に両手を当てて時折指でヤンキーを指差す。
エレナはその光景に見覚えがあった。
あれは自分を……妹を叱る時の姉だ。

事実、二人のヤンキー娘は頭を垂れて神妙な顔付き。
絶対レオナに叱られている。


「これで姉は完全に不良のトップに立ったんだと認識したのよね……」


その後、二言三言言葉を発したレオナは二人のヤンキーと共にメガネの少女に振り向き、深くその頭を下げた。
続いてヤンキー達もレオナと同じく深々と身体を折る。
メガネの少女は慌てた様子であわあわしていたが、レオナと数度の言葉を交わした後、ペコリとお辞儀してその場を去った。


「……あの直後は訳が分からなくてすぐに離れたのよね。
でもその日の夜に問詰める辺り、思い切りが良かったのか悪かったのか……自分の事ながら良く分からないわ」


そしてエレナは思い出す。あの夜の出来事を……




「お姉ちゃん……」

「なぁにエレナ? 宿題分からない所があるの?」

「ううん、そうじゃなくて……お姉ちゃん、今日の昼間何してた?」

「昼間はちょっと色々やったかな。一番時間を割いたのは都会の虫探しとゲーセンでのムシキ○グだけど」

「……今日、不良の人達と一緒に居たでしょ?
それで、メガネの女の人に謝ってた」

「あー、あれ見てたんだ? あれね、不良の人達があの子を恐喝しようとしてたの。
そこを虫探ししていた私が偶然通り掛かって、そのままお説教の後に謝ったの。悪い事したんだから当然でしょ?」

「でも……不良は脅してお金を取るのが当たり前なんでしょ?」

「私はその"当たり前"を変えたいの。だからこそスケ番になったのよ」

「え……?」

「私も時々不良に絡まれてる人を助けた事はあるけど……私一人がやったってそんなに変わらないのよね。
だから私は不良そのものを変えようと思ったの」

「変える……て?」

「学校や社会に反抗したいのならすれば良い。
勉学に価値が見出だせないならそれでも良い。
けれど何の関係も無い人に当たるのは絶対に駄目。
私はそう不良達に伝えたかった。
けれどそれだけで説得出来るなら誰も苦労はしないよね。
だから私は不良に指図出来て、また不良側からも無視出来ない存在……スケ番になったの」


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