カルディア学園

□アリソン初めてのお留守番
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「では行くが……本当に大丈夫なのか?」

「ん、平気。心配しないで」


そう言いながらもアリソンは不安顔。
事の始まりは昨日―――


「アリソン、明日営業に行く事になった」


ジェラルドは卓袱台を挟んで朝食を食べているアリソンに告げた。


「……また地方?」


アリソンは箸を止めぬままジェラルドに問い質す。


「あぁ、急に仕事が入ってな」


忘れている人も居るかも知れないが、ジェラルドはプロのマジシャンでもある。
決して喧嘩が強いだけの変人では無いのだ。

普段着としてならこの上なく奇妙な真っ黒スーツも、テレビ越し……しかもマジシャンの肩書きまで付けば、一転してステージ衣装として通ってしまう。
最近、とある番組でふとした拍子にシルクハットが外れ、意外にも整った顔立ちが晒されてからは徐々に人気も出て、仕事も増えて来た。

地方への仕事は帰りが遅くなりがちなので、いつもアリソンを連れて行っているのだが……今回は少々事情が違った。


「明日は俺以外に10人前後のマジシャン、そして観客やテレビ局のスタッフやらでかなり人が多くなる予定だ。
俺も全く無関係を通すワケには行かないからな……そんなに多くの他人と接するのはキツいだろう?」

「うん。でも、それじゃあ私はどうするの?」

「アリソンが良ければバルダかセシルの所に預けようと思う」

「………むぅ」

「嫌か?」

「嫌じゃない。だけどゼロが大変」

「大変?」

「ん、バルダとかに頼んだり、私を迎えに来たり……」

「バルダはそうそう人の頼みは断らない。
セシルは押せば何とかなるだろう」

「お迎えは? 駅から一人でバルダかセシルの家に来れる?」

「……………」

「ゼロ……」

「ど、どうする……?」

「……私が一人で留守番してる」

「無理じゃないか?」

「留守番ぐらい一人で出来る!
ゼロこそ一人で大丈夫なの?」

「付き人が居るから道に迷う事は無いだろう」

「付き人?」

「俺と一緒にステージに上がるアシスタントだ」

「あぁ、あの……」

「だから俺の方は心配いらない」

「ん、私も平気」

「ふむ……」


そして冒頭に戻る。


「では行くが……本当に大丈夫なのか?」

「ん、平気。心配しないで」

「……では、行ってくる」

「あ……」


アリソンは動いた。
歩き去ろうとするジェラルドの上着を無意識に掴んでしまい、また己の行動の意味に気付き、顔をうつむかせて唇を噛む。


「……やはり今からでもセシルに頼むか?」

「……平気」

「何かあったらすぐ電話しろ。
一刻を争う場合はバルダかセシルに連絡を取ると良い」

「ん、分かった」

「では行ってくる。土産も買ってくるからな」

「お菓子?」

「あぁ、菓子だ」

「ん、甘いお菓子買ってきて!」

「分かっている。それではな」


こうして、ジェラルドは最後にアリソンを一瞥して家を出たのだった。


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