カルディア学園
□アリソン今月のお菓子事情
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某月・一日
カルディア学園:教室
アリソンはご機嫌だった。
何故なら今日は月の初め……お小遣いの日なのだから――
キーンコーンカーンコーン―――……
「はーい皆、気を付けて帰ってねーっと」
女教師のやる気のない注意を打ち消し、俄かに騒がしくなる教室。
殆どの者が複数人のグループで集まり談笑する中、アリソンだけはその輪に入る事なくカバンを背負い立ち上がる。
「ゼロを捜さなきゃ……!」
ジェラルドは当日の朝にはお小遣いを渡さない。
彼曰く、朝昼晩の中でも朝は上位3位以内に入るぐらい眠いから……らしい。
もっとも、残りは昼と夜しか無いので、どうやったって3位以内には入るのだが。
したがってアリソンがお小遣いを貰うのは放課後。
以前まではお小遣いを貰えるまでジェラルドにくっついていたのだが……セシルに『出来る事なら授業は全部受けた方が良いですよ』と言われてからは、出来るだけ言う通りにしている。
それからは、毎月この日になるとジェラルドを捜す為校内で探索する日々。
彼も一応アリソンに配慮しているのか、見つかるまで校外に出る事はない。
ケータイで呼び出そうにも寝ている可能性が高い。
それで目が覚めたら覚めたで、あちこちうろつかれても困る。
故にアリソンは自分の足でジェラルドの所まで行くしかないのだ。
「教室には居ない。後は……屋上か図書室か」
アリソンは考えを巡らす。
この時期はまだ暑くないから校庭の木陰で寝てる可能性も有り得る。
極稀にだが、部員でも無いのにオカルト研究部に入り浸っている事もあった。
「……でも、この二つは後回しで良いや。後は屋上か図書室だけど……やっぱり屋上かな、大体屋上に居るし」
やはり確率的には屋上にいる可能性が一番高い。
アリソンは軽々と階段を上り……しかしすぐに息切れしながら屋上を目指す。
やっとの思いで屋上の扉を開くと、そこにはいつもの位置にいつもの体勢で寝転がっている誰よりも見慣れた男が……
「ゼロ、ゼロ、起きて!」
「む……アリソンか」
「お小遣い!」
「あぁ、ほら……」
朝は眠いから……そんな理由で朝に渡すのを拒んだ癖に、昼間も爆睡していたジェラルド。
彼は上着の内ポケットから財布を取り出し、アリソンに一枚のお札を差し出す。
「……1000円?」
「あぁ、1000円だ」
「なんで! いつもは3000円なのに……!!」
「……先月巨大パフェを食べるのに2000円前借りしただろう?」
「あ……」
アリソンは『しまった!』とでも言いたそうな顔で呟く。
「パフェ、3000円もするやつだったし……期間限定だったし……」
「来月は1000円で良いと言ったのはアリソンだぞ?」
「う……」
言葉に詰まるアリソン。
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