カルディア学園

□演劇の誘い
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「は〜い、じゃあ今日の稽古始めるから」


扇状に座る少女達の前でそう言ったのは、如何にも頭の軽そうなギャル風女子。


「はい! はい! 質問があります!!」


そう言って手を上げたのは扇の中心に座る少女。
長い黒髪に黒縁眼鏡と、物凄く地味。


「なに、アネット?」

「何で部長の私が座って、副部長のエラさんが仕切ってるんですか?」

「アンタがトンチンカンだからに決まってんでしょーが!」


そう言いながらハリセンを一発。
ギャルの言う事は至って正論なので、周りの部員も口出し出来ない。


そう、この二人がカルディア学園演劇部の部長と副部長だ。

見た目と口調は優等生だが、演劇の糧になる事は貪欲に……そして強引に我が物にしようとする部長、アネット・オルコット。

見た目と口調はギャルっぽいが、劇の脚本や部員のケアまでこなす真面目でしっかり者のエラ・ブルメル。

何故アネットが部長なのか疑問に思う声もあるが、実質仕切っているのはエラなので余り深く探りを入れる者は居ない。


「じゃ、今度こそ始めるから」

「はい! はい! 質問があります」

「質問は一度に済ませろっつったじゃん」


再びハリセン。


「うぅ……いえ、端っこに座るあの美少女はいったい何なのかと……」

「それは後でセシルに聞きなよ。
……いや、アタシの目の届かない所で騒がれると嫌だからやっぱり今説明してくれる?」

「はぁ……」


そう言われたセシルは若干困った表情を見せる。
何しろ件の美少女は自分が此所へ連れてきて……しかし部員の殆どはその少女に良い感情は持っていないのだから。


「確かアレですよね? セシルさんとただならぬ関係にある……」

「ちょッ!? いえ、私とアリソンさんはそんな関係では……
至って真面目。極々普通の親友関係ですよ」

「え? でもアリソンさんとは毎晩イケナイ遊びを繰り返してるとか……」

「噂です。ただの噂です」


まさかこんなにまで間違った噂が広まっているとは。
やはり学園屈指の変人達の前で言ってしまったのがマズかったか……と人知れずため息。


「まぁ、あの子っていっつもセシルかクライドと一緒に居るから不自然じゃないんだけどさ。
でも演劇部んトコに来たのは初めてだよね。
つーかセシルが近付かせなかったっぽいんだけど」

「いえ、アリソンさんは人見知りですし、部活動中は私もお話出来ないので」

「何で今更連れて来たの?」

「ジェラルドさんが平日の仕事で不在なんです。
今までは土日か祝日ぐらいの仕事を優先していたらしいのですが」

「セシルになら任せても安心だから平日出勤も始めた、と」

「まぁ、自惚れも認めさせてくれるのなら、そういう事です」


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