カルディア学園

□お婆ちゃんを守れ!
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閑静な住宅街を走る一台のバイクがあった。
たなびく革スーツと長い黒髪……フルフェイスヘルメットで顔は伺い知れないが、髪型と体型で女性である事は確かだ。
騒音は比較的押さえられており、搭乗者の配慮が見られる。

暫くすると、バイクはスピードを落とし、とある民家の前で止まった。
かなり古めかしい木造家屋で、このバイクとはあまりにも似つかわしくないが……彼女は慣れた様子で敷地内に足を踏み入れる。
ヘルメットを取り首を振ると、揺れる髪の隙間から端整な顔が見て取れた。

その女性――顔立ちからすると少女と言った方が正しいかも知れない――は、スタンドでバイクを自立させバックミラーで乱れた髪を整える。
そして首から下げた花の形の髪飾りをチェーンから外し、流れるような黒髪に差し込む。
それからまた少し髪を整えると、少女は満足のいった表情で頷いた。


「よし!」


ガラガラ……と引戸を開け、勝手知ったるという風に上がり込む。

少女は居間や台所を無視しながら、一切の迷いなく目的の場所……広い庭に面する縁側に向かう。
そこには少女の予想通り、探していた人物がいつも通りの姿勢と笑顔で佇んでいた。


「お婆ちゃん!」

「はいはい、よく来たねフランちゃん。そろそろ来る頃だと思ってたよ」


言いながらふぇっふぇと笑う白髪の老婆は盆に乗せた緑茶と茶菓子を差し出す。


「あ、もう! あたいが自分でやるから良いって言ったのに。
お婆ちゃん足が悪いんだから無理しないでよ」


そうプリプリ怒りながらも、老婆の隣りに座り差し出された茶菓子を美味しそうに摘むフランと呼ばれた少女。

見る人が見れば……正確には、彼女がジグロード学園四天王の一角であり、一部の人物を除いて常に冷めた目で周囲を見つめ、数多くの強い女性を屈伏させて奴隷に仕立ててきた女だと知る人が見れば、ニコニコと子供の様に屈託無く笑う彼女を見て驚いたに違いない。


「最近学校はどうだい?」

「うん、問題無いよ。勉強もしてるし。ほら」


手提げ鞄からゴソゴソとテストの答案用紙を引き出す。


「皆85点オーバー」

「頑張ったねぇ」

「当然! アイツ等に見せつけてやるんだから!!
お前達が落ち零れと呼んだ女はアンタ達より立派になった……ってね」

「こら、親の事をそんな風に言うもんじゃないよ」

「あたいはアイツ等の事親だと思ってないよ。
あたいは女が好き……同性愛者って知った時、何をしたのかお婆ちゃんも知ってるだろ?
有無を言わさず病院に連れてってこう言ったんだ。『この子の病気はどうやったら治るんだ?』ってね!
結局その時は医者に言われて引き下がったけど、家に帰ったら散々責められたよ。
誰を好きになろうがあたいの勝手じゃないか」


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