カルディア学園

□柔の壁
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「ハ、ハッ……俺の勝ちだな!」

「そうじゃの、ワシの完敗じゃ」

「完敗じゃねぇよ、ギリギリ負けだよ。
頼むからリベンジとかすんなよ? あんたみてーなバケモンとはもう金輪際喧嘩したくねー……」

「そうはいかん。ワシは今よりも更に強くなってお主に再戦を申し込む!」

「これ以上強くなるって人間辞める気かよ」





あぁ、そうだ……と多くの人間の居る広い部屋でガランテは一人思う。


(バルダの奴とのファーストコンタクトは喧嘩の申し込みだったな……
俺はいつの間にかダドの奴と並んでカルディアの双璧とか呼ばれてたから……それであの"玄人狩りのバルダ"が食い付いて来たんだよな)

(にしてもヤバかった。あん時は何発もパンチ食らってフラフラだったからなー……
苦し紛れに足払いしたら見事に引っ掛かってくれて、それで十字固めかまして勝ったんだ。
バルダの事だからもう同じ手は食らわないだろうが)

(あぁ、クソ! なんでこんな事考えてんだ俺……いや、完全に母ちゃんのせいなんだが)


「はーい、皆ちゅーもぉーく!」


広い部屋の中、明るい口調で口を開いた女性に視線が集中する。
しかし女性は微塵も気後れした様子は無く、至って平静に言葉を紡ぐ。


「今日のお料理教室は私の大好きなオムレツを作りまーす。
皆はオムレツ好きですかー?」

『はーい!』

「はい、良い返事ですね。目上の人には逆らわず、極力調子を合わせれば可愛がられるので良ーく覚えておいて下さいねー」


中には親子連れも居ると言うのに女性は堂々と言い放つ。
子供は良く分かっておらず、親は『まぁ、いつもの事ね』と半ば諦めているので目くじらを立てる者は居ない。


「さて、今日は何でか知らないけど生徒さんの数が多いので助っ人を呼びました。
向かって右に居るのが私の息子のガランテ。
左に居るのが先生のお料理仲間のバルダ君。
二人共大きくて怖いけど、顔に似合わずお料理上手で優しいお兄さんだから皆分からない事があったら遠慮せずに聞いてね?」

『はーい!』

「うん、良い返事。じゃ、早速お料理開始!」





「ブハァッ! あー、やっと終わった……どうにも子供は苦手だぜ」

「そうじゃのう、ワシにもガランテにも余り寄って来なかった。
確かに子供がこの巨躯を怖がるのも理解出来るが」


料理教室を終え、調理器具を片付けた二人は近くの公園のベンチに腰掛けていた。


「つーかよぉ、何で俺らフツーに喋ってんだろうな。
こないだ派手にやり合ったってのに」

「ふぅむ、ワシ等は喧嘩はしたが啀み合っていた訳では無いからの」

「あー、バルダにとって喧嘩ってのは……あれか? スポーツみたいな感じか?」

「それに近いの。言うなればワシの好むルール無用の格闘技の名前が喧嘩だった……といった所か」


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