カルディア学園

□特攻隊長のため息
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「ハァ〜……」


一年生にしてカルディア学園特攻隊長に就任したルル・ルーファスは大きなため息を吐いた。
そのため息の理由は二つ。
一つは、自業自得でエレナに捕まったリッツにお仕置する為にラピスを呼ぶ事。


「何だかオレがリッツ先輩の運命をカウントダウンしてる気分になるのは何でだろ?」


もう一つは、リッツの全貌を知らず、彼女を追い掛けてこの学園に来た事。


「元々リッツ先輩に憧れてカルディアに編入したのになぁ……」




少女は両親に蝶よ花よと、とても愛されて育った。
未だにラブラブな両親は、いつもルルに『全世界(二次元含む)で二番目に可愛いよ(わ)!』と言っていた。
一番は互いに伴侶だ。

だからだろうか。いつも可愛く着飾れ、女の子らしくを心掛ける様に言われていた。


「でもオレは何となくそれが嫌だったんだよな。
可愛いのも別に嫌いじゃなかったハズなんだけど……単に両親に対する反発だったのかも知れない」


今のルルは中性的な見た目で一人称もオレ。
スカートを穿いていなければ、女子だと判断するのは難しいかも知れない。
私服も男物ばかりで下手なイケメンよりもイケメンだが……心も身体も乙女である。
スカートに拒否反応がある訳でも無いし、幼い頃は少女向けアニメも普通に楽しんでいた。


「なのに何でこんな男っぽく変わったんだろうなぁ……」


ルルは思い出す。

自分が変わった時の事を―――




少女はクラスの人気者だった。
人形の様に可愛らしく……なのに勉強より運動の方が得意という、小学生にしてギャップ萌え(かどうかは不明だが)の持ち主。

その時はまだ現状になんの不満も抱いていなかった。
強いて上げるとするならば名前だろうか。

ルルという名前は可愛らしく当時の彼女にもピッタリだったのだが……何分フルネームはルル・ルーファス。
ルが三つも並んでいるので、あだ名は『ハミング』か『るーさん(ルが三つ)』であった。

そんな彼女が変わったのは小学校の卒業式を終え、後は中学校の入学式を控えた時期。
長かった髪をバッサリ切り、フワフワのスカートやリボンが付いたファッションも一掃した。


「キッカケは何なんだろうな……変わりたいって気持ちはあったけど、男っぽくなった理由がイマイチ分からない。
まさか当時の男性アイドルに憧れて? いや、単にそれまでの自分と真逆だからか?
まぁ、何にせよ変えた当初は両親が大騒ぎだったな……」




少女は立っていた。
自らが住う家の前で立っていた。
いつもなら無造作に扉を開けて靴を脱ぎ、冷蔵庫の麦茶をコップいっぱいに注いで一気飲む所なのだが……今朝とはほぼ真逆の格好に変わった事が彼女の足を鈍らせていた。


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