カルディア学園

□副番の憂鬱
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「全く、あの人は何処へ行ったのか……」


エレナは人を探していた。
その人物は言わずもがなカルディア学園女子ヤンキーのトップに立つ女……スケ番、リッツ・クオールである。

彼女は毎日の様に問題を起こす。
最早それは日常と言って差し支えない頻度だが、だからと言って見逃す訳には行かない。

そもそもエレナはカルディアの女子ヤンキーを規律で縛り、一般人に迷惑を掛ける事を極力避けている。
なのにそのトップたるリッツが白昼堂々、女生徒との淫らな行為に手を出しては示しが付かない。
しかも皆それに慣れたのか、もしくは既にリッツの毒牙に掛かったのか……リッツの手に掛かった者も含めて誰も文句を言わないのが更に質が悪い。

故にリッツの行動がエレナの耳に入るのも遅く、エレナが後になってリッツを探しに行く様は最早お馴染みの光景となっていた。

しかし今回は様子が違う。
いつもなら、少なくとも表面上は平静を保つ彼女なのに、先程ベルガ達にあっさりと苛ついている事を見抜かれ、またその苛立ちをライナーにぶつけてしまった。
まぁ、彼は女性を鬼呼ばわりしたので然程同情は出来ないが……

だが彼女が苛つくのは当然だ。
なにしろ今回リッツの手に掛かったのは他でも無いエレナ本人なのだから。


「全く、何であんな人がスケ番なのか……まぁ、完全に私のせいなのですが」


エレナはクールダウンの意味も込めて昔の事を思い出す。
何故自分は今この副番という地位にいるのか。
何故堅物な委員長タイプの自分が不良の世界に飛び込んだのか。
そのキッカケを周囲に目を光らせながら思い出す。




少女には三つ上の姉が居た。
その姉はスポーツ万能で勉学も常にトップクラス。
また、とても優しくて面倒見が良い。
重度の虫好きという事を除けば、正に才色兼備を体現した様な人だった。

そんな姉がエレナは大好きだった。
当然この優秀過ぎる姉と比較される事は多々あったが、エレナは姉と比べられる事自体が嬉しかった。
その後に必ず姉から言われる『エレナも頑張れば私を越えられるよ』という言葉も。

だからこそ……姉が高校生になった途端、一気にスケ番に駆け上がった事を知った時は失望を覚えた。
ヤンキー、不良と言えば暴力的で他人の迷惑を顧みず、強者にはひたすら媚び諂い弱者からは恐喝で搾取する最低の人種。
姉はそんな奴等のトップになったのだ。

確かに実力的には疑問は無かった。
姉は格闘技も嗜んでいるし、エレナも姉に憧れて同じジムで学んでいる。
その際、姉はいつも『力に酔っては駄目。強くなるという事は自分自身に打ち勝つという事』と教えてくれた。
そんな姉が不良のトップに……エレナからしてみれば裏切り以外の何物でも無かったのだ。


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