カルディア学園

□殴れなくなったボクサー
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「痛てて……流石レバンさんの前蹴り。
急所は外したのにまだ痛いっすよ」

「まぁ、今のはあんな詰まらねぇ駄洒落を言ったオメーが悪い。
レバンみたく笑いに敏感な方じゃねぇが、俺だってキレそうになったしな」

「もうちょい身内に優しくしましょうよ。
しっかしさっきのアホは何だったんすかねぇ……あれで本当にレバンさんに勝てると思ったんすかね?」

「思ったからわざわざ俺を指名したんだろう。
しかしライナー。さっきは喧嘩を引き受けると言ったが、バンテージはしなくても平気になったのか?」

「あー、裸拳の上からグローブなら何とか。
まぁ、まだバンテあった方が安心っすけど。
理想は裸拳の上からバンテなんすけどねぇ……」

「だが以前と比べたら融通は聞く様になっている。そう焦る事も無い」

「だと良いんすけどね。にしてもこの街がタイマン指向で良かったっすよ。
他の街なら俺がグローブはめてる間に複数人でフルボッコっすもん。
まぁ、そんな事エレナに言ったら『一番理想的なのは喧嘩しない事です』って言いながら鋭いミドルキックをかまされましたが」

「おうおう、天下のエレナを呼び捨てたぁな」

「一応エレナとは幼馴染みなんすけどね。
まぁ、学校でタメ口呼び捨てしよう物なら『目上の人に対する礼儀がなっていません』って言いながらミドルキックかまされますけど」

「そーいや、エレナってリッツにツッコミ入れる時もミドルだよな。何でだ?」

「何でも、淑女が人前で大きく足を上げるのははしたないとかで。
それでもローじゃなくてミドルを選ぶのは、少しでも相手に深手を負わせたいっていう気持ちの現れなんすかねぇ……」

「おいおい、殺意高ぇな!」

「いや、幾ら何でもお前程じゃないだろう。
仮にお前を越えるとしたら、殺意の波動に目覚めたエレナだ」

「なはは、殺意の波動っすか。
でもまぁ、実際エレナは良い奴っすよ。
あん時も一番親身になってくれましたし」




とある街の小さなボクシングジム。
そこの門を叩いた一人の少年が居た。

その名はライナー・バートル。
当時は未だ8歳。しかし飲み込みは早かった。

彼はそのジムに居る同年代の中では一番強かった。
明らかに他人より才能に恵まれ……しかし他のジムに所属している天才とは歴然の差があるのも事実。
故に彼は"三年に一人の秀才"と呼ばれる様になる。

凡人より才能はあるが天才には及ばない……正に彼らしいニックネームだった。


「ま、俺はそのニックネームもそこそこ気に入ってたんすけどね」

「あ? 何でだ?」

「だって高校野球みたいに毎年出てくる"十年に一人の逸材"よりよっぽどレアですもん。
それに、十年に一人の天才より三年に一人の秀才の方が何かリアリティあるでしょ?」

「まぁ、そうだが……」


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