小説
□垣間見えるもの
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燃え盛る炎にのまれる、街。
逃げ惑う人々、その顔に浮かぶのは恐怖か絶望か。
それともその両方か。
「この世の地獄とはまさにこの事だな…」
絶対的な力をもって、絶望を絶望で塗り潰す。
世界の破壊者とはよく言ったものだ。
彼女にとって、世界とはどれだけ存在するのか。
存在する世界の数だけ、絶望する人間は増える。
「こりゃあ、死神の奴は大忙しだな?」
チラリとこれだけの事をして、俺達すら顔をしかめる惨状を目の前にしてなお、顔色ひとつ変えずに微笑む少女を見る。
久しく感じていなかった感情が、ぞわりと背筋を這う。
リリーが俺の膝を枕にして、寝ているのは幸か不幸か。
いや、きっとこれで良かったんだろう。
こんな顔は知らないだろうから。
正直言って、何百何千の人間が死のうが俺には関係無い。
降りかかる火の粉は払うが、降りかからなければどれほどの業火であろうが関係はない。
ただこれほどの惨状を作り出したのが、悪魔でも死神でも、ましてや神でも無い、人間くずれの魔女だっつうのが…
「…コワいとこなんだよなぁ」
ポツリと呟いて、幸せそうな顔で眠るリリーの頭を撫でた。