06/07の日記

16:33
TOA 使用人貴族→烈風
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「…ねえ、無駄な抵抗はやめてボク達の仲間になりなよ」
「なんで…そんなにしつこく勧誘に来る?」
「ヴァンがそれを望んでいるから」
「たったそれだけの理由で?」
「逆に言うと、それ以外に理由なんてないよ」

ボクにはヴァンしかいないんだから、あの人の言う通りに動くのは当然のことでしょう?
心底不思議そうな声音でシンクはそう言った。
相変わらず邪魔な仮面のせいでその表情を窺い知ることはできないが、恐らく現在のそれは年相応のものなのだろう。
というよりもこの子供は元来、とても純粋なのだと思う。
だからこそどこまでも自分を卑下することを厭わないし、そんな自分を生み出した世界を心底嫌悪し、憎悪することができる。
何も知らなかった無垢なシンクに、ヴァンはまず憎しみという感情を底積みとして植え付けたのだ。


「…シンク、ヴァンはお前のことを道具としてしか見てないんだぞ」
「うん、そうだね。ヴァンはちゃんとボクを道具として使ってくれる。……ボクを道具として使うこともできない甘ちゃんのくせに、分かったような口を利かないでよ」

ヴァンの駒の一つとして役に立つことがボクの存在価値なんだ。
それがからっぽのボクが唯一感じることのできる"生"なんだよ。


「アッシュといい、お前といい…見ててムカつくんだよね。何にもしなくっても最初からヴァンに愛されて、必要とされているのに……無駄に抵抗ばっかりしてさぁ、」

不愉快そうにそう吐き出した後、「あ、そうだ」と、先程の不機嫌っぷりがまるで嘘のように弾む声色。続いて艶やかに口唇が歪められる。


「アンタがあのレプリカルークを殺そうとしてるって言ってやろうか。アンタの過去もろとも全部暴露しちゃって、ね?」

ねえ、とっても名案だとは思わない?ガイラルディア・ガラン・ガルディオス伯爵?


「シンク、それだけは……やめてくれ」
「なんで?そもそもボクにはアンタのお願いを聞く義理はないし、今の居場所を奪ってしまうのがアンタを仲間に引き入れる手段としては一番手っ取り早いじゃない」
「でも俺は!……俺は、もう…ルークを殺せやしない」
「…………」
「俺にはもう、殺せないよ…」

自分一人では立ち上がり、歩くこともできず、ましてや言葉なんてものも忘れてしまっていたあの子供を。(当然だ。だってあいつはあの時、まだ生まれて間もない赤子同然だったのだから。)
最初から全部教えた。歩き方も、言葉も、全部俺が。


「…弟みたいなもんなんだ、俺にとってルークは。だから、」
「お世話をしているうちに情が移っちゃったから殺せませんって?……アンタ馬鹿じゃないの」

シンクはふん、と馬鹿にしたように鼻を鳴らし、眉間に皺を寄せる。
続いて呆れた声色で「くだらない家族ごっこを見せ付けられたせいで胸やけしそう」とガイを嘲笑った。


「……まあ、せいぜい頑張れば?」

そしてヴァンについてこなかったことを散々悔いればいいよ。
どうせ最後に笑うのはヴァンなんだから…
そう自分に言い聞かせるようにシンクは呟き、二つ名の通り、まるで烈風のような素早さでその場を立ち去った。
物凄いスピードでここから遠ざかっていく彼の気配を僅かながらも感じたが、追跡することは既に不可能だなとガイは冷静に判断し、とりあえず苦し紛れに溜め息を吐いてみる。


「……それでも、シンク…お前は、」

ヴァンに命令されて嫌々またここに来るのだろうな。
今までも同じように繰り返したその台詞を、ガイは悲しげに、それでも僅かに喜色の残った微笑を浮かべて言った。



end



ヴァン師匠は何とかしてガイを仲間に引き入れたい。
シンクは自分にとって唯一の存在であるヴァンがアッシュ並みに大切にしているガイが大嫌い。
ガイはからっぽなシンクに昔の自分の面影が重なってどうにも放っておけず、会っていくうちに段々とシンクの存在に惹かれている。

これぞ正しくトライアングラー\^o^/

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