時破りの呪術王

□召喚編
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俺はサラザールとか言うガキが部屋を後にするのをただ呆然と見送った。


くだらない。

馬鹿らしい。

つまらない。


なぜ生き永らえた?
俺はあの場で終わるはずだったのに……。
それは彼女が俺を押したから。

押した?

何処へ?

分からない……。

ただ気がついたら俺は戦場から切り離され、レクノアとか言うトチ狂った野郎の前に居て……。

「バカみてぇ…」

自分の体を見る。
胸は福与かに膨らみ…女性のそれ…。
よもや無意識の産物だ。
自分の身を護る為、同情を向けられやすいであろう女性に変身していた。
酷いダメージを受け、この魔法を解くのも今すぐには無理だろう。

この期に及んで生にしがみつく自分が嫌だった。

アイツは俺のために命を捨てたのに…俺は未だに生きている。

「どうして…どうしてだよ……」

どうして一緒に逝かせてくれなかった?
どうして置いて逝くんだ?

もう独りは嫌だ。

俺は体を引き摺りながら部屋を…家を出た。
先ほどよりは幾分動くが…あくまでさっきよりは……だ。
それでも何処かに行きたかった。

アイツの所に逝きたかった。

「それは何処にあるんだい?」

嫌みったらしい声が聞こえた。
窓から様子を見ていたらしい…陰険眼鏡…レクノアがいた。

「アイツの所に…ってソレは何処にあるんだい?」

優しく微笑むアイツの目はぜんぜん笑っていなかった。
ぞっとした。
恐怖ではない。
むしろ……歓喜。

嫌気が差した。
俺はアイツを完全無視して進んだ。
村の外へ…荒野の彼方へ……。





「類は友をなんとやら…か」

僕はロキを止めなかった。
好きにすればいい。
確かに召喚(よ)んだのは僕だけど…そこまでの責任もつ気はないし。
きっとサラザールは酷く戸惑うんだろうなぁ。
あの子は彼女に似て優しいから。

ホントそっくりなんだ。



「君はきっといけないよ、大事な人の所には」

ロキの後姿を思い出す。
まるで愛に飢えた幼子のように求める。
でも、きっと願う場所には辿り着けない。

だって。
君は僕と同じ……咎人なんだから。
綺麗な所にいる最愛の人に逢えるはずなんてないんだ。

「父上…っ」

「どうしたんだい?サラザール」

「あの人がいないんですっ」

サラザールは酷く戸惑った表情で研究室に顔を出した。
ほらやっぱり。
君は彼女そっくりだ。

「あぁ構わないよ」

「でも…」

「戻りたくなったら勝手に戻ってくるよ、ソレよりこの植物採って来てくれるかな?」

「ぁ…はぃ…」

そう言ってサラザールは僕から一枚の羊皮紙を受け取った。
大丈夫だよ。
サラザール。
戻りたくなったら勝手に戻ってくる。
逝きたくなったら勝手に逝くだろうから。

君は惑わされなくていい。
邪神にも……僕にも…。

どうか惑わされないで。
僕の可愛い息子、サラザール。
[4]

ぁー。
文才が欲しい。
[2009.11.15]

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