頂き物*捧げ物


□ユウとアルマ
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コツン…コツン。



夜の鎮まった廊下に一つの足音だけが長く続く廊下に響き渡る。



見慣れた廊下。

見慣れた壁。

見慣れた電灯。

見慣れた部屋。




だだっ広い場所だが、自分がいける場所は限られている。


空間だけが広いだけで、どこも見慣れた場所と変わらない。

ここ以外の場所にいけば、もっと違うなにかがあるのだろうか…?



…いや。どこいってもやることは一緒だ…。




そんなことを考えながらユウは、今日のイノセンスシンクロ実験のせいで寝付けずに、隣に寝てるアルマに気付かれないようにひっそりと離れると、痛みを感じる体にイライラしながら行き慣れた場所に向かった。






【空】






ユウがついた場所は、あの寒く自分が起きる前からいた所。胎中室だ。
周りには以前の自分と同じ、いつ起きるかわからない者達が冷たい水の中にいる。

結局、なんの変化もない見慣れた場所には変わりない。


…そういえばアルマの言ってた妖精もいるっていってたが。

見たことねぇし、どうせ今日も現れないだろう。

…時々わけわからねぇ女は見るが、それを見るとひどく頭が痛くなる。そいつだけは現れてほしくない。




「いたっ!ユウ〜!」

「…アルマ」



わけわからん女の代わりにアルマが現れた。




「もう。探したよ」

「よく寝てたから、起こすの悪いし」

「寝れないなら、薬もらってこようか?」

「…いい。めんどくせぇ」



そう言って俯いて何も言わなくなったユウの隣にアルマが座った。




「…つきあわなくていいぞ」

「ううん。…そういえば今日話しする時間なかったし、暇なら僕に付き合って?」



たしかに、今日は検査やら実験やらで話す時間がなかったと思い出す。

アルマが嬉しそうな顔で言うから、それなら別にいいかとアルマの話を聞いた。





それからアルマはいろんな話をした。

アルマの好きなマヨネーズの話から始まって、食べ物のこと、生き物のこと、外の世界のこと。

全部アルマが自分で調べたり、エドガーから聞いた情報がほとんどで、たまに相槌を打つ俺と違って、アルマは楽しそうにそれらを話す。



「――それでね。外には空っていうのがあるんだってさ」

「ソラ?」

「うん。そこに雲と太陽ってやつが浮いてて、そいつが天気って奴を操ってるんだ」

「そら…って何だ?」

「空ってのはね、太陽からの光が、大気中の酸素、窒素、水蒸気などの分子や、光の波長よりも小さい微粒子にぶつかり散乱するとき、青のように波長の短い光がて――」(ペラペラ)

「わかりにくい」

「え〜;;そう本に書いてあって。…僕見たことないし…」

「俺だって見たことないんだ。もっと簡単に話せ」

「う゛〜と…。たしかエドガー博士が、綺麗な青色をして、触ることができないんだってさ」


それを聞いたユウは少し考えてから


「なんだそれ。わけわかんねぇ」


とだけ言った。




「いつかユウと見れたらいいね」

「……」



外が今いるココとどう違うのか分からないが、アルマがそうやって笑って言うなら、きっと見れた時もそんな顔をするんだろう。

それなら、少しは楽しそうだ…とユウは見た記憶がない空を思い浮かべた。

きっとそいつを見れた俺の顔も、アルマと同じになってると思って……。



END


(お粗末さまでした;ここまで読んでいただきありがとうございます!)

水那

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