頂き物*捧げ物
□ユウとアルマ
1ページ/1ページ
コツン…コツン。
夜の鎮まった廊下に一つの足音だけが長く続く廊下に響き渡る。
見慣れた廊下。
見慣れた壁。
見慣れた電灯。
見慣れた部屋。
だだっ広い場所だが、自分がいける場所は限られている。
空間だけが広いだけで、どこも見慣れた場所と変わらない。
ここ以外の場所にいけば、もっと違うなにかがあるのだろうか…?
…いや。どこいってもやることは一緒だ…。
そんなことを考えながらユウは、今日のイノセンスシンクロ実験のせいで寝付けずに、隣に寝てるアルマに気付かれないようにひっそりと離れると、痛みを感じる体にイライラしながら行き慣れた場所に向かった。
【空】
ユウがついた場所は、あの寒く自分が起きる前からいた所。胎中室だ。
周りには以前の自分と同じ、いつ起きるかわからない者達が冷たい水の中にいる。
結局、なんの変化もない見慣れた場所には変わりない。
…そういえばアルマの言ってた妖精もいるっていってたが。
見たことねぇし、どうせ今日も現れないだろう。
…時々わけわからねぇ女は見るが、それを見るとひどく頭が痛くなる。そいつだけは現れてほしくない。
「いたっ!ユウ〜!」
「…アルマ」
わけわからん女の代わりにアルマが現れた。
「もう。探したよ」
「よく寝てたから、起こすの悪いし」
「寝れないなら、薬もらってこようか?」
「…いい。めんどくせぇ」
そう言って俯いて何も言わなくなったユウの隣にアルマが座った。
「…つきあわなくていいぞ」
「ううん。…そういえば今日話しする時間なかったし、暇なら僕に付き合って?」
たしかに、今日は検査やら実験やらで話す時間がなかったと思い出す。
アルマが嬉しそうな顔で言うから、それなら別にいいかとアルマの話を聞いた。
それからアルマはいろんな話をした。
アルマの好きなマヨネーズの話から始まって、食べ物のこと、生き物のこと、外の世界のこと。
全部アルマが自分で調べたり、エドガーから聞いた情報がほとんどで、たまに相槌を打つ俺と違って、アルマは楽しそうにそれらを話す。
「――それでね。外には空っていうのがあるんだってさ」
「ソラ?」
「うん。そこに雲と太陽ってやつが浮いてて、そいつが天気って奴を操ってるんだ」
「そら…って何だ?」
「空ってのはね、太陽からの光が、大気中の酸素、窒素、水蒸気などの分子や、光の波長よりも小さい微粒子にぶつかり散乱するとき、青のように波長の短い光がて――」(ペラペラ)
「わかりにくい」
「え〜;;そう本に書いてあって。…僕見たことないし…」
「俺だって見たことないんだ。もっと簡単に話せ」
「う゛〜と…。たしかエドガー博士が、綺麗な青色をして、触ることができないんだってさ」
それを聞いたユウは少し考えてから
「なんだそれ。わけわかんねぇ」
とだけ言った。
「いつかユウと見れたらいいね」
「……」
外が今いるココとどう違うのか分からないが、アルマがそうやって笑って言うなら、きっと見れた時もそんな顔をするんだろう。
それなら、少しは楽しそうだ…とユウは見た記憶がない空を思い浮かべた。
きっとそいつを見れた俺の顔も、アルマと同じになってると思って……。
END
(お粗末さまでした;ここまで読んでいただきありがとうございます!)
水那