アサガオ
□本能
1ページ/2ページ
ねぇ、わたしだけを見てよ
眼の奥に潜む狂気
その心で感じ取って頂戴
本能
「う、あぁ…!!」
薄暗い部屋、漏れる吐息
なんて、美しいの?わたしは興奮した
赤い色
悶えるあなた、微笑むわたし
「あ、ああぁあ…、も、やめ、て…くださ、……っ」
「まだ、まだだよ」
「痛い…いたい、です……!!」
「知って、る」
そしてもう一度振り下ろす
あなたにとって、
わたしは遊びだったことくらい、知ってる
あなたには、
他に遊べる女の子がたくさん居たことも、知ってる
それでもずっと一緒にいたかった
他の誰よりも、あなたとの時間を共用して、いたかった
だって わたしは あなた の こと
あいしてる から
「いや、いやだぁ…死にたく、な いぃぃ…」
「あいしてる、わ ランボ」
「いた、いたいよぉ……」
「ランボ、 あいしてる あいしてるの」
「うあ"、ぁぁ、あ…っ……×××ぁ…っ あ」
「らん、ぼ?」
驚いた
まさか、わたしの名前を 最期に、呼んでくれる なんて
わたしはランボの頬に軽く触れた
まだ、あたたかかった
叫び声が止んで、辺りに静寂が響いた(外でクラクションの音が少し、聞こえた)
身体を滅多刺しにされたランボ
わたしも、ランボも血まみれだった
「ね、ぇ…もう、…しんじゃった、の…?」
まだ少し、開かれた口からは、
今にも言葉を発しそうなの、に(またわたしの名前を呼んで、なんて もう、言えない)
恐怖に開かれた目は、
霞んだわたしが、映って る
でも、その表情が、なんとなく微笑んでいるように、見えたなんて
そんなこと思ったわたしは、少し、都合が良すぎるかし、ら
馬乗りになっていたわたしは、ランボの身体から離れて、隣に座った
体育座りになって、ランボの血が付いた、ナイフを眺めた
それを少し舐めてみた
まだ、微かにあたたかかった
「こんなにも あいしてるのに なんで とどかないんだろう、ね」
「ゆるせなかった くやしかった」
「あなたが ほかのこと からだを かさねてた」
「わたしだけ を みれば いい のに」
「あなたは ただ ほほえんで た」
「それ が かなし かった」
「ほんとうは だれ より も かなしかった のは あなた なのに」
「その ひとみに わたし は うつって ました か ?」
床に倒れたままのあなたに、わたしは静かにキスをする
あなたの唇は、もう、微かに冷たくなっていた
「あいして ました あなた だけ を」
あなたの血がついたナイフを大きく振りかざした
目の前が赤くなる
あなたの顔が遠くなる
遠のいてくる、意識の中
確かに
あなた の
やさしい
えがお が
みえ た
END.