銀沖銀高中心短編
□逢瀬
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俺は唖然とする新八を尻目に大概ボロくなった傘を手に土砂降りの中を歩きだした。
江戸の街はいつもより活気がなく、どんよりとしている。
…七夕か。
俺は空を見上げて祈った、夜には晴れてくれますように…。
七夕の日は雨が多い、きっと織姫と彦星に嫉妬を焼いている奴がいるんだ。
決った宿にいき、いつもの部屋にと足を踏み入れる。
「織姫さんか…。」
宿につき、酒とつまみを注文して俺は織姫を待つ。
俺の願いとはうらはらに未だ雨は降り続いている。
「湿気た面してやがるなぁ、彦星さんよぉ。」
気配を消すの止めろって言ってんのに。
「遅刻だよ、織姫さん。」
俺はそう言って思いっきり抱き締めた。
「雨すごいから来てくれるか心配だった、よかった来てくれて。」
「一年に一度この日は何が逢っても逢いにくるさ、逢いたいのはてめえだけじゃねえってこった。」