Haruna*Abe

□ナースのお仕事
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練習のしすぎでぶっ倒れた。そんなオレは気がついたら、ここ、県立聖アレアレアンドレリュス病院に収容されていたんだ。


そうしたら、オレの目の前に、天の使いか、すっごい素敵なピンク色のナース服を着た看護婦さんと、……なにやらモンチッチ頭のレモンイエローの看護婦さんが現れた。


そして、入院二日目。


「は〜い榛名ーお注射ですよー」
マシュマロのような微笑みに、なおかつコットンの肌ざわりのナース服。天使の笑顔を輝かせてスラリと立つその手には、ひと抱えもある注射器。それでも榛名は頬をほんのり赤く染め満面笑顔で立ち上がった。
「はぁぁいぃ、涼音さん」

と、
「はーーーい元希さん!!ほーたいですよっ」
どこからわいてきたのか、両手にどどんと大量の包帯を抱えた隆也君が閉められていたドアをバタンとあけて入ってきた。

「うわっ!邪魔すんじゃねーバカタカヤ!」
「黙れエロ投手!」
ビシュ と包帯が一つ飛ぶ。
「なんだと、あぁ!?投手にものを投げつけるなんていい度胸だな」
「その歪んだ脳みそ治療してやる」
「はぁぁ!?歪んでるのは自分の脳じゃありませんか?男のくせにそんな服着ちゃってさ」
「こ、これは…」
「スカートこんなに短くていいと思ってんのかよ」
「あっ、やだ!ひっぱんないで」
「必死に押さえるくらいなら履かなきゃいいだろ?」
「元希さんには関係ないでしょ!」
「おまえはオレの看護婦さんなんじゃなかったの?」
「で、でも!」

「は〜い榛名 ちっくんv」

ぷすっ

「うわぁあぁぁぁ!」
「びっくりした?」
「涼音さん、いきなりはないっすよ!!」
「アハハ、ごめんね。でもいまのでおしまいだよ。驚いたぶん、あんまりいたくなかったでしょ?」
「……そういえば……すごいっす、さすがは涼音さん!あなたこそ白衣の天使です」
「いま世界で一番カワイイって思った?」
「はい!」

飛び散るピンクスターダスト。
広がる煌き夢空間。

榛名の瞳に湧き上がる熱い思いに、涼音は相も変らぬニッコリ顔で答える。



完全無欠に外野と化した隆也はそれを見守るしかなかった。






「……ふえっ」




音もなく走り去ったレモンイエローのナースの行方は誰も知らない。




「涼音さん、オレ、初めて会ったときから、ずっと涼音さんのことが……」
「榛名…」
「あなたのことが…」
「そろそろ薬が効きだす頃よ?」
「は?………うぐ、ぐっ??」
「身体痺れてきちゃったでしょ、榛名が安静になるように大河先生にいわれて打った注射だから」
「お、大河……」
「いまベッドに運んであげるねv」

ひょい

(う、え? オレ、お姫様だっこされてる?)

「よっ、しょっ、とっ」

コロン

「はーい、お布団かけますね」

ぽふぽふ

「はい、安静にしててくださいね」

にっこり

(涼音さん…だめだ、舌まで痺れて、言葉が出ない)

榛名は悲しそうな眼で涼音をみつめる。自分の気持ちを伝える最後の手段は視線だけだ。

「榛名…」

それをみて涼音がそっと顔をよせた。

「ゆっくり休んで、早く治してね」

ちゅ、と額に温かい唇がふれた。





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