日和

□ある日の妹子
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ある日、妹子とゴーレム吉田さんは原っぱで出会い、話しをした。

「最近太子にもフィッシュ竹中にも会っていないが、二人とも元気にしているか?」
「元気ですよー。このまえ竹中さんが沼で溺れて昏睡状態に陥ったときにはドキッとしましたが大丈夫でした。太子は相変わらず蛾を追いかけてます」
「そうか。まあそれならよかった。私も変わりないから今度会ったらそう伝えといてくれ」
「フィッシュ竹中さんにですか?」
「いや、どちらでもいいんだ。竹中でも太子でも」
「竹中さんになら伝えやすいんですよ、いつも朝は川にいますから」
「そうか、竹中と親しくなったのか」
「ええ、竹中さんはカッコイイですね。いう言葉に含蓄があります。髪も綺麗な金色だし…日差しを浴びると虹色に光ってすごかったです」
「あいつは全体的にキラキラしているからな、しかし変わり者だろう?」
「ええ、確かに不思議なことをよくいうし、ときには強がったりしているのがよくわかっちゃったりしますけど…でもカッコイイと思います」
「そうか。…太子はどうだ?カッコイイか?」
「え〜、太子ですか?僕、よくわかりません。まあ、この間の会議では結構まともなこといってましたけど。でもあとでブランコのそばでエアギターして遊んでたし」
「太子はお前のことをずいぶんかっていたぞ」
「自分の雑事をおしつけやすいからじゃないですか?まったく、ひどいんですよ吉田さん。僕、毎日ヘトヘトです」
「そうか」
「だから時々、竹中さんのところにいって気分転換するんです。竹中さんは渓流や滝に詳しくて案内してくれるんですよ」
「お前は竹中が好きだな」
「尊敬してます」
「太子よりもか」
「…太子はなにを考えてるのか僕、わかりません」
「なるほどな…だが妹子。お前は竹中と太子だったらどちらが好みだ?」
「好み?…あの、それはどういう意味でしょうか?」
「恋人にだったらだよ」
「えー?!知りませんよ僕、そんなこと」
「…竹中の話しばかりするから彼のほうか?」
「さあ…」
「それとも太子か?」
「さあ…」
「妹子」
「僕、仕事を残してきたので戻ります。そろそろ馬子様がいらっしゃるんです。それではすみません。吉田さんがお元気なこと、二人に伝えておきます」

そして妹子は走りだした。





頭のなかをのぞかれたら、すべてがわかってしまうんだろうな。朝、目覚めてから眠るまで、あの人のことばかり。




「でも、どうしてもいえないよ」





なんでこんな性格なんだろうと、空をみあげてもでるのはため息ばかり。しまいに自分がおかしくなってあきれたように笑いだした。


「おー?なに道端でニヤついとるんじゃこのポテト。セクシー摂政様が迎えにきてやったぞ」
「……太子、このタイミングで現れないでください」
「ん?」
「現れないでくださいっ」
「ムキー!なんだその態度は、お前、上司をなんだと思ってるんだ!!」
「知りません、僕、行きます」
「あっ、ずるいぞ先にかけだすなんて。こら〜ちゃんと男らしくよーいどんをせんかい!」
「よーいどん!!」
「ぐふー、走りながらいいやがったっ」





まったくバカだなあ。

こうしてこのかけっこも、明日何度も思い出す、大切な記憶になってしまうなんて。


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あまのじゃく芋。

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