※うさみちゃんパロを想像された方、すみません。本当にただのパロディです。なんとなく高校生のころチ" /> 日和 携帯ホームページ フォレスト
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□名探偵閻魔
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">※うさみちゃんパロを想像された方、すみません。本当にただのパロディです。なんとなく高校生のころチラ読みしたシャーロック・ホームズを思い出しながら書いてみました(しかし記憶は恐ろしく曖昧だ)ヤマナシオチナシ。名探偵閻魔。助手の鬼男君。

朝から本格的な雨が降っていた。鬼男は磨りガラスがはめ込まれている事務所の玄関を開け、ずぶ濡れになった靴に悪態をついた。つい先ほど、曲がり角でやってきた辻馬車に泥をかけられたことも彼の不機嫌を高めさせた。
だが、薄暗い廊下の突き当たりにあるドアを開けると暖かい部屋が待っていて彼の張り詰めた気持ちを少しゆるめさせた。
「こんにちは、鬼男君」
クラシックな趣の机に座っていた閻魔が、鬼男を待ち構えていたかのように微笑みかけてくる。なんとね、気がついているなら出迎えてくれてもいいものを。しかし鬼男は知っていた。閻魔は決してそんなことはしない。
だが、閻魔は鬼男の訪問を喜んでいるらしく、机に両肘をつき、手を組んでそのうえに顎を乗せるという、彼独特のポーズで自分の助手を眺めた。
「いらっしゃい、鬼男君」
鬼男は軽く会釈をすると、すぐに彼専用の椅子に腰を降ろし、パイプをとりだしてマッチを擦り、火をつけた。紫色の煙りがたちのぼる。それを興味深そうに閻魔はみた。
「大王、お話があります」
鬼男が口を開く。大王とは閻魔のニックネームだ。
だが、それを遮るように閻魔がいった。
「君は今日、私に内緒で例の資産家の屋敷に行ってきたね」
鬼男が驚いた様子でポカンと口をあけた。だが閻魔はなおも続ける。
「しかもこの雨のなか意を決して行ったにもかかわらず、たいした収穫はなし。それどころか厄介事が増えたんでしょう?それでとにかく俺のところにこなくちゃと思った。大切なことだから。だがここに向かう途中で君は頭を少し整理しようと思った。それほどやっかいで複雑な問題だ。君はカフェ・アランジェに寄って、お茶を飲んで考えた。そしてここにやってきたんだ、違うかい?」
鬼男は戸惑いながらも頷く。
「そうです、その通りです。しかしなぜ?あなたは千里眼をお持ちなのですか?」
すると、閻魔は柔和に微笑み、まさか、と答える。
「では、なぜですか?」
鬼男は少し不機嫌な声になった。自分のことが全てお見通しなのにその理由がわからないのはなんとも落ち着かないものだ。すると閻魔は鬼男の気持ちを察しておもむろに話しだした。
「まあまあ。じゃあさっそくタネ明かしといこうか。まずこの部屋の窓からはちょうど玄関が斜め下にみえるんだよ。君が横丁の角を曲がったところあたりからここの玄関までの歩く姿を俺は眺められるわけ。そこで君が今日、手持ちのコートのなかでも一番上等なマッキントッシュのコートを着ているところをみた。いまはこの部屋の手前、廊下にあるハンガーにさげられているものをね。そんな一張羅を着て出かけるなんて、それなりの相手じゃなきゃないだろう?」
閻魔がゆっくりと自らもパイプを吸いはじめた。鬼男は椅子のなかに身体をうずめるように沈めて足を組む。そうして閻魔をななめからみた。確かにあのコートは鬼男の慎ましい生活のなかでは一番上等のものだった。それが市民というものじゃないか!
 さて、閻魔はというとプカリと優雅に煙りをドーナツ型にして吐き出して、部屋のなかに天使の輪を描きだす。
「続きを聞きたいかい?」
「ええ、どうぞ」
「では、」
閻魔はいって瞳を閉じる。
「君は今日の午後、ゴメスと食事をすることになっていたろう。やっこさん、スイス旅行から帰ってきて親友の君に土産話をたんともってきているはずた。しかし君は今日は延期にしてもらった、なぜって、時計がいま六時を指している。しかし君は動かない。私に大事な用ができたからだな?それからね、君がカフェ・アランジェに寄ってその頭を冷やすためにカフェを一杯震える喉元に通してきたなんてことを想像するのは至極簡単なことさ。君がパイプを吸う時にだしたマッチ箱の柄をみればわかる。ここらじゃそんなロココ趣味に富んだ装丁のマッチをだすのはあそこだけだ」
ここまできて、鬼男はヒューと口笛を吹いた。
「やれやれ、脱帽ですよ」
閻魔は満足げにパイプを燻らせるたが、息を吐き出すと同時にその目は鋭さを増した。
「で?なにがあったんだい、鬼男君」

おわる

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