日和
□風鈴
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ちりん、と風鈴がなった。芭蕉の汗が頬をつたって一滴、畳にこぼれる。
ちりんちりんちりん
風鈴が騒がしく音をたてる。
ちりん
最後に小さく響いて風がやんだ。
芭蕉は畳の上の白い足袋をみつめる。それからそれが履かれている脚をたどる。
窓の外には逞しく育った入道雲。
すべらかな腹。
意外にしっかりとした胸。
外から差し込む光りは強く、彼の足の影をくっきりと畳に焼きつけている。
「曽良君」
芭蕉が囁くようにいう。
「そんなことをしたってダメなんだよ」
曽良が瞳を光らせた。
ちりりん、とまた風鈴が鳴りはじめる。
「弟子は抱かないんだ」
曽良の着物を脱ぎ捨てた肩に風鈴の影がうつっている。
「なにを聞いたのか知らないけれど」
掠れた声。
「弟子は、ダメだ」
「芭蕉さん」
曽良が畳に落ちた着物を手にとった。そのひどく緩慢な動きに芭蕉は思わず見入る。
と、視界が突然バサリと白いものでふさがれた。ぐい、と力強く押し倒される。畳のうえでもがくと、曽良の着物の生地を通してあたりがみえた。光る部分ばかりがはっきりとうつる。そして宿の軒先で吹き飛ばされるように揺れる風鈴の影がやけに目についた。
曽良が自分を拒むように押し戻そうとする芭蕉の腕をつかんで荒い息をする。
この子は泣いているんじゃなかろうか。
芭蕉はついに陥った因果な自分の運命を思った。
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なにが書きたかったのだらう…
ええと、芭蕉は若い頃、男の恋人があって、そこでいろいろと波瀾があって、それが終わったときから、もはや残りの人生は俳句だけに打ち込もうと決めて暮らしていたのに、無意識のうちに弟子の曽良を旅の同行者に選び(好みだった)、でも曽良は俳句にしか興味がないだろうと安心していたら、実は慕われていて(ナイスポーカーフェース)、ああまずいと日々さりげなく曽良をかわしていたのに、ある日誰かから芭蕉の過去の色恋沙汰を聞かされた曽良が一線越えてきた、みたいな。
…でたらめすみません!逃げます脱兎!