Sakaeguti*shinooka

□片想い同盟
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授業終了のベルが鳴るまで後十分。
阿部はちらりと黒板の横、教室の右上にかかっている時計を見た。
授業用に作られた現代史のプリントを読み上げている先生の声がまどろっこしく響く。先生の声を追い抜いて最後まで読んでしまった者にとっては退屈な時間だ。
(これ、自分で読み返せば、それでいいんじゃん。)
先生が苦労して作ってくれたのはありがたいけれど、それを読み上げるだけならサッサと授業を終えてほしい。後7分。阿部は所在なさげにそっと教室の中に目を走らせた。つと、それが篠岡の上で止まる。
 結うにはやや短めのと思われる、やわらかい髪の毛を茶色いゴムで二つに留めている彼女は、真面目に話を聞いているのだろうか、プリントにじっと瞳を落としたままだ。と、阿部の視線が止ったのに反応したとでもいうように、片手がそっと動くと、音がたたない程度に軽く、手にしていた薄ピンクのシャーペンが机の上を叩きはじめた。退屈そうに。
 阿部はにやりとその頬をほころばせた。なんだ、やっぱりつまんないんじゃん。同じ気持ちを共有しているようで、そのやわらかい二つ結いが今まで以上に親しげに感じた。


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なんだかアベチヨっぽい(笑)野球を愛する者という同志愛なのです。クラスの女子のなかで、千代はやっぱり特別だといいなぁ。阿部にとって、そして花井や水谷にとって。
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