Mihasi*Abe

□日曜日の朝
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朝、テーブルの上に、カチ、と白くて取っ手が金色の小さなカップが置かれた。

阿部はしばらくそれを神妙な顔でみる。

それから溜息を心のなかでついて、三橋をみた。
三橋は静かな顔でパンにバターを塗っている。
いただきます、をいおうとしていた阿部の口のなかで、すべての声は絡まってでてこない。

沈黙が続く。

とうとう三橋が小さな声で、いただきます、といった。

阿部はじっとカップをみつめている。
パンの端をちょっとだけかじった三橋が、

「嫌…だった」

といった。

ここで、嫌だった?と疑問で聞いてくるのではなくて、断定でいうところが彼らしいけれど悪いところ。

阿部はムッとした表情で、カップをつかむと、ごくごくと飲んだ。

それから三橋に向き直る。

「なあ、やっぱ直接言葉でいおうよ」

「でも、そういうのもありかもなっていったの、阿部君だ」
「いったけど!でも実際にされてみたらなんかやだ。かえって気恥ずかしい」
「言葉、のが、いい」
「いい」
「じゃ、いいます」

三橋が、ふう、と一息おいてからまっすぐな瞳を向けてきた。

「今夜、抱きたいです」





「そのいいかたも嫌だ!なんかオレ、受け身じゃんっ」
「ええ…そんなこといわれたって…」

三橋がくしゅんと眉をさげる。


朝食にコーヒーじゃなくてココアがでたら、お誘いの合図。

でもそれは、たった一日で消えた習慣だった。

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