Mihasi*Abe

□朝食はママレード
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家賃を安くするために友達と同居する。そういうのシェアっていうんだ、ヨーロッパ、特にフランスじゃあ当たり前のことなんだぜ。と、三橋を難なく言い含めて始めた同棲生活。


「廉、ほらバター」
「ん」

火曜日の二人の朝は慌ただしい。お互い晴れて同じ大学に入れたのだが、理系と文系という違いがあった。だが、この火曜日は偶然二人とも一限に必修科目が入っているので、九時半には 教室にいないといけない。

「あ、隆也君、苺ジャムが終わっちゃった」
「じゃ、今日からママレードだ。昨日買っておいた」

三橋の首がギシッとなって固まった。

「え?ダメだった?」

三橋は申し訳なさそうにもぞもぞしだす。
「まえ食べたことあるけど苦かった…」
「…そんなに苦くねーよこれは」
「そう?」
三橋はスプーンでママレードをすくう阿部の動きを不安そうな顔で眺める。が、阿部はスプーンを相手の目の前にさしだすと、本当に苦くないからといった。あむ、と三橋がそれを食べる。
「ま、多少はほろ苦いかもしれないけどよ。たぶんおまえが食べたことあるのって高級なやつだろ。オレらがスーパーで買ってる種類のは安いやつだからそんなに皮が入ってねーんだよ」
そういって阿部は笑った。
「甘い」
「だろ?」

三橋はもこもことそれを舌のうえで転がし、これなら食べられるという。
「こんな美味しいママレードがあるなんて知らなかった!」
「お、おう…ソレハヨカッタ」

なんか間違ってる気がする…阿部はそう心のなかで思ったが、それは黙っていることにした。
パンとコーヒーを飲んで鞄を点検していざ、玄関へ。と、突然三橋の携帯がなる。なんだろうと開けると、同じ講義をとっている友達からのメールが届いていた。

『さっきキャンパスの情報端末みたら、一限休講になってたよ』

「うお!」
「どうした、廉?」
「休講だって」
「はぁ!?なんだよー、おまえ今日はゆっくりになったのか」
「うひ、あ、でもオレも一緒に出る」
「おまえ、次は四限からなんだろ?」
「平気。学食でなにか食べたり、友達とサークル室にいってトランプして時間潰すから」
「勉強しろよ…」
阿部はカクリと肩を落とした。

アパートの鍵をがちゃりとかける。コートをしっかり着込まねばならない今朝の温度に身を震わせながら二人はアパートの端にある階段を使って下に降りた。カツカツと靴が鉄製の階段を響かせ、その音で雀がいっせいに空に飛び立ってゆく。駅に通じる大通に出るまでには狭い路地をいかねばならない。誰もいない路地で、阿部が三橋の肩を抱いた。
「…なあ、廉」
低い声で囁く。
「今朝のママレードさ、あれって」



おまえの味がするんだぜ


end



アベミハベ。
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