Mihasi*Abe

□幼なじみは気になるか
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九組の昼休み。浜田、泉、田島、三橋の四人は仲良く机を囲み、それぞれの弁当に取り組んでいた。しばらくしてやっと心とお腹が満たされた頃、田島がポカリスエットでコロッケパンをドコンドコンと胃に沈めてから、満足そうに手で口を拭うと、次にその手でいまは中身を抜き取られ力無く、わずかな風にも押し流される頼りなげな透明の袋、その表面に、どーんとおっきなコロッケパンと茶色の文字でプリントされたそれを、なんら同情も哀悼の意も見せることなく、いきなりギュイと絞り上げたかと思うと、かたむすびにしてポイと机の上に置いた。それからこの天才野球少年は、隣でオムライスと野菜サラダに浸かっている天才野球少年その二の方を向く。
「なあなあ、三橋」
「なに?」
名前を呼ばれた方は、はっと顔を上げたが、そのせいでいまちょうど口に入れようとしていたスプーンが机と顔のあいだで宙吊りになってしまった。
「三橋と浜田っておんなじアパートに住んでたんだよな?」
「うん、ギシギシ荘だ、よ」
話題に自分の名前が出たので、田島の目の前に座っていた浜田がこち見る。その隣の泉も同じようにした。
「キシシ」
三橋の返事を聞いて田島が笑う。
「なに変な笑い方してんだよ、田島」
田島のその笑いがなぜか自分に向けられているのに気づいて泉が不審そうに聞いた。
「だって、つまり三橋と浜田は幼なじみってことだろ?」
「うん?」
「でも、泉、気にしねーんだもん」
「なにを?」
泉は田島が言わんとしていることがわからず、その大きな瞳の上で眉をひそませる。すると田島が、
「だからさ、オレの知らない浜田を知ってる〜とかいって」
「はぁ!?」
田島の言葉が終わらないうちにおっかぶせるように泉が叫んだ。パァッとほんのわずかに頬にあかみがさしたが、運よくみんなは大きな声を出したせいだとしか思わなかった。泉はでんと机に肘をつくと田島を見ながらため息をついて、
「そんな馬鹿な発想するヤツいるのかよ、考えつきもしなかった。だいたいオレ、浜田と同じ小学校だからずいぶんチビの頃から知ってるようなもんだし」
「そうか、気になんねーか」
田島が明るい声でいうと、
「なるわけないじゃん」
と、泉がクールにいい放つ。
その隣で浜田ががっくりしながら、そこまではっきりいわれるとなぜか虚しいとつぶやいた。
浜田は最近めっきり生意気になった元後輩を横目で見てから田島に、なんでそんなこと考えついたのかと尋ねる。すると田島は、いやあ、だってさ…と苦笑いを浮かべた。
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