Haruna*Abe
□曖昧な君
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榛名は手でクルクル帽子をまわしていた。クルクルとクルクルと、まるで風車みたいにそれはまわっていた。そして彼は阿部に視線をあわすなり話しはじめた。
「オレだって、最後はちょーっとうまくいかなかったと思ってるよ。けどまあ、なんてーの?あれはあれでよかったっつーか。いい経験になったからよ。あんときもっとこう…いや、いーや、そんなこと。なあ?今後にイカシマショウってやつだよ」
榛名はパンッと帽子を振って被り直した。そしてくるりと後ろを向き…
パシン
と音がして、みると帽子が地面に張りついていた。
「あ……落っことしちゃった」
榛名が小さく呟く。
阿部はそれを眺めていた。前にも稀にみていたな、と彼は思う。投げつけられた帽子。でもいまは榛名の言葉を信じてやろう。
そのまましゃがみ込んだ榛名の後ろから、彼の頭をクシャリとなぜた。
しばらくそうしてなぜている。
ゆっくりと、手を離した。ぬくもりだけが残った。
「オレはアンタのバッテリーじゃないから、ちゃんとした人にいってください」
ゆっくりと榛名は身を起こす。
その背中だけをみせながら榛名はのびをした。それから帽子を被り直すと、彼は真っすぐに歩いていってしまった。
(そして三日後にメールがくる)
『隆也、ジャムパン食べてー』
(…………)
『食べりゃいいでしょ』
『いまバスん中』
『降りてから食え』
(それで?)
メールは終わる。
「腹減った」
阿部は小さく呟いた。