Haruna*Abe

□ツンデレ論争
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とある平和な昼下がり。静かなマックに泉と阿部はいた。泉はフィレオフィッシュを食べながら阿部をみる。
「なあ、オレら西浦の二大ツンデレなのかな?」
はあ?と阿部が大きな声をあげた。
「なんだよ、それ」
「いや、栄口がいってたんだよ、だから」
「ツンデレってなんだよそもそも」
ポテトをくわえながら阿部が聞く。

「ツンデレっていうのは好きなヤツに普段ツンケンしてるのに、時々優しいとこみせたり甘えたりするヤツのことをいうんだよ」
「…おまえ、いってて恥ずかしくねぇ?」
「なんで?」
思わずまわりに聞こえていないかと思って顔を伏せぎみになった阿部にたいし、泉はチューとオレンジジュースをストローから飲む。泉孝介はまわりのことなど気にしない。オレが伝えたいことを伝えてなにが悪い。 阿部も気を取り直したのか、顔をあげた。
「…誰がそんなこといってたんだよ?」
「栄口」
「あいつ、意外とマニアックだな」
「ま、とにかくそういわれたんだ」
ふーん、と阿部はまたポテトを食べだした。
「じゃあさ、おまえは浜田さんにたいしてツンデレなんだ」
は?あいつにはツンもデレもねーよ、泉はそういって鼻で笑う。笑い方が少しトゲトゲしかった。 「なに、オレって浜田とセットなわけ?」
「…だってそーじゃん」
ふーん、そう、といいながら泉はつまらなそうな顔でバーガーをかじる。それから急に笑みを浮かべて、
「あいつがオレにつきまとってくるからそうみえんだろ」といった。
すると、
「あー、泉だ、やほー!」
ナイスタイミン、金髪にバンダナをとめた浜田が、トレーを手に近づいてくる。
「浜田さん」
「なんだキンキラカマキリ」
「なにそれ、泉、訳わかんない」
「あっちにあいてる席あるぞ、行けよ」
泉は店内の一際寂しそうな一角を指差した。
「泉がいじめる…」
「うぜえ」
それでも浜田は彼の隣に腰をおろした。なるほど、これがツンか、と阿部は思う。
「浜田のポテト出来たてでうまそうじゃん、もーらい」
「あ!そんなにか?!」
泉はさっきからひどいことばかりする。それでも浜田はあまり気にしていないようだった。
(みようによっては泉がちょっかいだしてんのかもな)
阿部はツンケンしている泉を心のなかで笑った。
「なにがおかしいんだよ」
心のなかで、と思っていたのに、どうやら顔に出ていたようだ。そこで阿部はニヤリと笑って、
「いや、ツンデレの神髄をみせてもらったと思って」
じっ、と向こうがこっちを睨んでくる。阿部は可笑しくなってさらに笑みを深めた。

と、

「加具山先輩、こっち空いてますよー」

店内に響くような声。聞いた途端に阿部の表情が変わる。

(なんでこんなとこに来んだよ…!)

阿部は身体が一瞬で凍るように熱くなった。ん、と泉が振り返る。

「あ、デカイの発見」

榛名はまだ初々しい雰囲気の抜けないイガグリの青年を連れている。

「せーんぱい、早く!」

しかし、この大きいほうがまるでこどもみたいにはしゃいでいるのだ。

「そんなさわぐな、恥ずかしい」
イガグリ君が二人がけの席をとった榛名の向かいに座ると、榛名は機嫌よくこういった。

「だって先輩とデート出来て嬉しいンすもん」




うわ……

泉がちらりと横目でみると、案の定、目の前から冷たく凍るようなオーラが溢れ出ている。しかもその瞳は虚だ。
「おーい、大丈夫か〜」
小声で尋ねると、まぶたを伏せて少し顔をそむける。事情に詳しくない浜田はきょとんとしながら二人をかわるがわるみつめた。
そのあいだもやたらとテンションの高い声が聞こえてくる。ちったあ自重しろよ、泉はイラッとしてジュースをキツくにぎった。

「だって、カグさんいつもオレ置いて帰っちゃうから」
「…それは…オレだってちょっと秘密の練習してるんだよ」
「お!ホントすか!」
「まーな、おまえに甘えてるわけにはいかないからな」
「いーっすねーそのライバル宣言」
「ちがっ!…別にそんなんじゃねーよ」
「なにいってんすか。オレ、一緒に野球やれて、競いあえて、すっげ楽しいんですよ」



「なあ、泉、あいつひょっとして榛名じゃないか?」
「そうだよ」
「一緒にいんの誰?武蔵野の人だよな、きっと」
「あれだろ、先発投手だろ?」
「オレ、行くわ」

カタン、と阿部が立ち上がった。

「おい、おまえどこいくんだよ?」
泉が顔をそちらに向ける。すると阿部は無表情のまま、
「別に」
といって歩き出した。その伏せ気味の瞳が気に食わない。トレーの返却コーナーに向かった後ろ姿に、泉は大きな声をかけた。
「おい、阿部隆也」

びくっと阿部の肩が動く。
「…タカヤ?」

ふっと、榛名が動きを止めて店内を見渡した。
「お?…おー、タカヤじゃん!!!」

キッと阿部が榛名を睨む。それにも動じず榛名は席を立ってズカズカとこっちへ来た。

「すげーキグー。こんなところでなにしてんだよ」
「なにって、マック食べてたに決まってんじゃないですか」

ツン

阿部が顔を背けた。
「相変わらずつれねーなー。カグさーん、みてくださいよ、こいつがシニアん頃のタカヤ。捕手です」
「おー。はじめまして」
「ど、どうも…」
「君かぁ、榛名が武蔵野に誘いそこなったっていうのは」
「…はい?」
「そうなんですよ、このかわいくねーヤツ、音信不通にしやがって」

イッタイナンノコトダ?
阿部の頭からハテナマークが飛ぶ。だが、榛名は構わずその頭をかいぐりかいぐりした。

「うっわ、なんか髪が伸びたぶんヤーラケー。ちょっときもちいな」
「やめろ!放せ!」
「やーだぴょーん」
「あ、あんたバカだろ?!」
「うーん、加具山先輩と隆也いっぺんになんてオレついてるなぁ」
「いっぺんにってなんだよ!!」

ワイワイガヤガヤ


「なあ、泉、なんかあそこ楽しそうだね」
「………アホくさ……」

えんど

泉が男前に書けていたら幸いです(力いれてたのそこかい!)

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