Haruna*Abe

□死ぬほどウザい元希さん
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阿部が空腹を埋めるために買ってきたホットドックとパックの牛乳。腹減った―、とそれにパクついた阿部の隣で榛名が「やんv」と声を出した。
「…なんですか?」
阿部が瞬間的に嫌そうな表情をして、それを口から離す。すると榛名は
「や、いーから、いーから。気にせず食べてな」と、促した。
はあ、と阿部はやや眉をしかめつつそれをまたかじる。
「あんっv」
「……あんた、わざとやってるだろう」
ギロッと睨みをきかせて、彼は榛名のほうに視線を向けた。
「なんのことだよ?」
「オレが、喰うたびに変な声だすなっつってんの!」
「いってねーって」
「いってんだろ!聞こえてくるんだから!!」
「まあそんなにカリカリするなよ。本当に沸点低いねーおまえは」
誰のせいだ、と阿部は吐き捨てるようにいって、パックの牛乳をぎゅむっとつかんで飲む。そのあいだも榛名は身を乗り出していかにもなにかを待ちかねているように絡みつく視線を送ってくるのでウザいことこの上ない。コツン、と阿部はパックを机に置いた。もうあとはホットドックしか残っていない。
「…!」
阿部が口を開いて齧ろうとした瞬間、榛名もさっと口を開く。食べるふりをして素早くパンを顔から離すと、榛名が、あ、と声を漏らして止まった。
「フリかよ!」
「当然でしょう。相手をひっかけるのは捕手として得意ですから。にしてもいいませんでしたね。ちょっとタイミングが早かったかな。スライダーと見せかけてカーブ投げさせたのに相手が振りとどまってボールのカウント一つ増やしちゃったような感じだな」
「もしもーし、パン食べる時間がなくなるぞー」
「うっさいですね、あんたが邪魔しなければもっと早く食べきれるんだよ!!」
「はっやっく、はっやっくっ」
「せかすな、ムカつくんだよ!」
「先輩にたいしてムカつくとかいってっし、この一年」
「だって、あんたが…」
「あんた、とかさー、人のことそんな風に呼ばないでくれる?元希ってちゃんと呼べよ」
「…元希さん」
「よしよし」
「っかつく」
阿部はもう空になっているはずの牛乳パックのストローを口に入れてチュウ、と吸う。もちろんなにもでてこなかった。それでもまたパンを食べるのがしゃくなので、そのまま宙を睨むようにしてストローを吸い上げる。パックのなかの空気が吸われてペコっとへこんできた。すると榛名が阿部の隣へと椅子をずらせて、その耳元で囁くようにいう。
「……隆也、もう…でないの…お願い、ゆるして…」
カッ、と阿部は口からパックを離すとべしっと近くにあったゴミ箱へ捨てた。
「うっわー、乱暴だねぇ」
「誰のせいだと思ってんだよ!!!!」
ばん、と机を叩くと阿部はホットドックをつかんで一気に食べる。食べるというよりもうヤケになって噛みちぎっているといったほうが正しい。
「やーん、隆也、ごういーんvvv」
そんな阿部の横顔をみながら満面笑みではやし立てる榛名。食べ終わってパンの袋をまるめると、阿部はそれもゴミ箱に放り込んだ。いつのまにか顔が真っ赤になって、肩で息をしている。
「あんたのも食いちぎってやろうか」
ギリリと歯がみした阿部の隣で榛名はお腹を抱えて笑っていた。

戸田北のとある穏やかなおやつタイム。
……穏やか?
榛阿なんだか阿榛なんだか(おい)

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