Jewelry**
□フリー小説(巣西)
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今だけは
「さて何しよっか」
「そうだな…」
春の日差しを受けた砂がきらきらと輝くグラウンドで、巣山と西広は立っていた。
栄口と沖が委員会に出席しているため、まだ他クラスの人間が来ていない空間で二人きり。
“二人きり”
それを認識するだけで、自分の体がまるでセメントで固められたかのように動かなってしまう。
(全然意識してないんだろうな…)
隣でのほほんとグラウンドを見渡している付き合い始めたばかりの恋人を見て、巣山はこそりと苦笑をもらした。
「トンボかけようか」
「おぅ」
なるべく端の方から、二人並んでならしていく。
西広はとても丁寧だから、巣山はそれに合わせる為にゆっくりと歩く。
ここを走る人間が気持ちよく走れるようにと、部員達を考えながら西広は土をならしていくのだろう。
(そうゆうトコが…)
「巣山?」
「うぉっ」
突然声をかけられ、驚いてつい声をあげてしまった。
「どうした?体調悪い?」
「あ、いや…」
心配そうに見てくる西広にまさか君のことを考えてましたなど言えるわけもなく巣山は言葉を濁す。
そんな様子を見て、西広の眉が下がる。
「俺には、言えないこと?」
悲しそうに歪められた顔を見て、思わず巣山は口を滑らせてしまう。
「あのな」
「うん」
「今西広と二人だけだから緊張してんの」
「え、あっ…」
途端に赤くなる西広の顔。どうやら巣山と二人きりだということに今更気づいたらしい。
(…鈍いなぁ)
「西広」
「な、なに?」
茹でダコのような状態で慌てる西広があまりにかわいくて巣山は持っていたトンボを捨てて、目の前の体を抱き寄せた。
「す、すやまっ」
抱きしめられて竦む西広が、慌てたように声をあげる。
「んー…?」
あの、その、とゴニョゴニョ呟いたあと、西広はやっと言いたかったことを口に出した。
「…好き、です」
「…俺も」
(そろそろ他の奴もくるだろうな)
でも、
(離したくない)
キラキラと輝くグラウンド
今だけは二人だけのものだから
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『アフォリズム』様で配布されていた壱万打フリー小説を頂いてきてしまいました(か、勝手に・汗)
巣山と西広…!巣西ですっvv
このカップリング、初めて拝読したのですが、穏やかでお互いを大事に考えている様子がひしひしと伝わってきます。部員たちのために丁寧にトンボをかける二人。さぞやグランドはすべらかになるでしょうねvvvvv
西広先生のたおやかさに、密かに心惹かれ煩悶している硬派な巣山が素敵です!!(大和男児と撫子を見ているようです、えへv)