・オリジナル・町田 ろく
□…にんぎょひめ…
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人魚姫
長らく、なかなか決着のつかない戦争がありました。
人々がそのきっかけを忘れてしまう程、その戦争は長く続いていました。
どちらの国も、同じような人々が住み、同じような言葉を話し、
同じような文化を持っていました。
そう、元は一つの同じ国でした。
しかし、ある時、二つにわかれて以来、ずっと戦争をしていました。
−−海の上はとても静かでした。
闇夜に三本のマストの船が浮かんでいました。
海と違って船の上はとても賑やかでした。
人魚姫はその船を見ていました。
白い砂浜に少女がうちあげられていました。
昇ったばかりの日が彼女を照らします。
長いブロンドが波間で輝いていました。
【ここは?】
意識を取り戻した少女がゆっくりと身を起こしました。
「・・・・貴女は?」
少女の目の前に一人の青年がいました。
高貴身なりの美青年でした。
青年は少女の姿に見とれていました。
しっとりぬれて日に輝くブロンド
青石をはめこんだような瞳
そして、陶器のように白くて、すべらかな肌、
彼の周囲にいるどの女性より、美しかったのです。
「お名前は?」
青年はどこか惚けている少女に問いました。
少女はゆっくり、青年の方に視線をうつしましたが何も言いません