・オリジナル・町田 ろく
□−−吉利支丹(キリシタン)−−
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天国は何処に、愛はそこに在るのか
ある時アスラは、ある村に赴いた。
その村の村人は、赤子を抱いた観世音の像を拝み、首には、十字のかざりを提げ、
家々の所々に十字の紋が人からは見つかりにくい所に刻んであった。
そこは、俗に吉利支丹と呼ばれる者達の村だった。
吉利支丹
「信じる者は救われるのです。」
村の一人の娘がアスラにそう言った。
首には十字のペンダント。
「神は慈悲深いのです。」
戦乱のこの世で、力なき人々は、救いの手にすがる。
ほどなくしてアスラはその村から去った。
そしてその後、キリシタン禁制となった。
そして また 再び、アスラがその村に足を踏み入れた時、
吉利支丹がちょうど処刑されている最中だった。
その中に、あの娘もいた。
何人かは信仰を捨て、逃れたが、それでも大部分が捨てなかった。
村の中心に巨大な穴が掘られた。
そしてそこに吉利支丹達がワラで編んだ簀巻に包まれ、縛られて穴に投げこまれた。
何人もの人が投げこまれた後に上にかぶせるように上から、
燃えやすい枯れ木や枯れ草がドカドカと投げこまれた。
それから、いくつもの松明が穴へと投げこまれた。
穴から、巨大な炎が上がった。
そして、赤くたぎる炎の中には、海老のように焼かれていく吉利支丹達。
炎からドス黒い煙と油の混じった空気と共に異臭があふれ出た。
炎の中でのたうちまわる吉利支丹達がよく見えた。