・オリジナル・町田 ろく
□−−しゃぼん玉−−
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しゃぼん玉
はかないもの、夢と人の命。
何度目かの飢饉に見舞われた。
「こりゃ、ひでぇな・・・・」
荒んだ、村に似つかわない煌めく、赤い髪と眼を持った青年がやって来た。
砂の混じった風が、埋葬されることなくうち捨てられている死体を撫でる。
そんな村の中を何か輝くものが風にのって舞っていた。
透明な、真珠のようなそれ。
青年は、それがやってくる方向に、足を進めた。村のちょっと離れた井戸から、それはやってきていた。
白い真っ白な衣を着た子供が、それを吹いていた。
「みんな、ボクの友達。」
光るそれを、愛おしそうに、言った。
「そうか。」
「きれいでしょ。」
それに手を伸ばして、子供は言った。
「そうだな。」
「だけど、とっても、もろくて、はかないの。」
子供はまた、吹きはじめた。