・オリジナル・町田 ろく

□−−人喰い鬼−−
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   人喰い鬼


  愛しいから憎い。

   あるときアスラはとある民家に一夜の宿を求めた。
  そこには男と女が住んでいた。
  身分違いの恋らしく、男は女を親元からつれさらい、ここで夫婦として暮らしていた。
   あるときアスラはまた再び、道筋の関係でその民家を訪れた。がそこに男の妻の姿はなく、代わりに、血の匂いがアスラの鼻をついた。
  男はアスラを心よくまた泊めてくれた。

  愛に狂ってしまった者共よ。

 「人を喰うと鬼になってしまうというのは本当だったんだね。
  あれ以来、どんなに自分の腹をかっ捌いても咽を掻っ切っても死なないんだ死ねないんだ。」

  男は頭をかかえて言った。

 「あんた、一体 いくつ 喰った?」
         ・・・

  アスラは問うた。
  男はニンマリ笑った。
  その口には人には無いハズの牙と手には変色して固くなった爪。
  そして額には肉が少しもりあがったように小さな角。
  男は爪と牙を向いて、アスラを襲う。
  目は焦点が定まっていなく口を大きく開けてアスラの咽もとに噛みついた。
  アスラは抵抗することもなく、その紅の瞳で男を見ていた。

××××××××××××××××××××××××


  あるとき女の家の者が女を連れ戻しに来た。
  男は抵抗するも女の兄弟達に殴られ、蹴られ、ついに女は女の親達と兄弟達の手によって連れ戻されてしまった。
   それでも男、女を忘れることができなかった。
  あきらめることができなかった。
  何年かして、男はようやく女の嫁ぎ先をつきとめた。
  妄執と未練が男を突き動かした。
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