・オリジナル・町田 ろく
□−−人喰い鬼−−
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男は女に会った。
女の方は男を見て驚いた。
男は女を連れ戻しに来た。
いつか、女の親達と、兄弟達がやったように。男は女を連れ去ってしまった。
女の意志など関係なく。
もうすでにその時点から男は狂ってしまったのかもしれない。
男はもと女と住んでいた家にまた再び女と住んだ。
女の方は嫌がったがおとなしく男と住んでいた。
幸せな日々が男に戻ってきた。
あるとき 女は、逃げ出した。
男は、女を追った。そしてついには殺してしまった。
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アスラは自らの咽に噛みつく男の頭を手でつかむ。
有り得ないほどの力でつかむ。
やがて男の頭の骨が砕けるような感触があり、男は目玉を向いて死んだ。
ごぼりと咽を噛まれたせいで吐血する。
目の前の男も、目玉から鼻から耳から、口から、血を流して死んでいた。
アスラは男の首に噛みついた。
いつから狂ってしまったのだろう、どこで間違ってしまったんだろう、
何がいけなかったんだろう、
どこから全てがかわってしまったんだろう。
やがて、肉という血という全て 男は喰われてしまい、血だらけの骨となった。
アスラは口を拭い、立ち上がる。
血で真っ赤に染まってしまったが特に気にする様子もなく男の家の中、奥の間へと進んだ。
「別に人を棄ててしまったことについては、責めやしねよ。」
もう答えのない骨だけになってしまった男に言った。
「オレも人を棄てたモンだしな。」
かつては黒かった髪と目を思う。
染まってから何度も洗い流してももとの色に戻ることのなかった炎の色の髪。
アスラは奥の間の戸を開けた。木のこすれるかわいた音がした。