・オリジナル・町田 ろく
□−−ふたりあそび−−
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彼は彼女に言った。
「子供の頃の約束でしょ。」
大人びてしまった彼女はそう言い放った。
彼は泣きそうな顔になった。
「もう、私についてこないで。」
彼女は言った。
「私は嫁に行かなきゃいけないの。」
彼女はまだ子供の彼に言った。
彼は彼女に牙を向いた。
だって双子でも彼は鬼の子、彼女は人の子だったのだから。
−−喰う者と喰われる者−−
彼は彼女を食べてしまった。
それは彼女の婚儀の前の晩のことだった。
彼女の赤く染め上げられた、白かった婚衣が残っていた。
人は花嫁を捜したがどこにも見つからなかった。
「ボクはそれでも愛してる。」
暖かい陽射しが差し込む春の野で彼は言った。
寝っ転がっていると生きているハズなのに死体のようだった。
ただ開かれた目は空だけをじっと見ていた。
「独り者同士、家族になるか。」
アスラは彼にたずねた。